インサイドセールス部門において、「リードの選別に時間がかかる」「データ入力に追われてコア業務に集中できない」といった課題を抱える企業は少なくありません。こうした課題の多くは、AI技術の導入によって解決できる可能性があります。
本コラムでは、インサイドセールスにおけるAI活用のメリット、具体的な活用例、導入企業の成功事例、そしてツール選定のポイントについて詳しく解説します。
目次
インサイドセールスでAIを活用するメリットは?
インサイドセールスは、見込み顧客への初期アプローチやニーズのヒアリング、商談機会の創出など、営業活動の起点を担う重要な役割です。しかし、有望なリードの選別や企業リサーチ、ヒアリング内容の入力、通電しないリードへの再架電など時間を要する業務も多く、担当者が本来注力すべきコア業務に十分な時間を割けないという課題が生じています。
AIを活用する最大のメリットは、こうした定型的で時間のかかる業務を効率化できることです。その結果、インサイドセールス担当者は、売上に直結する質の高いコミュニケーションや戦略的な判断といったコア業務に集中できるようになります。コア業務に十分な時間を確保できることで、顧客対応の質向上や商談創出数の増加といった成果が期待できます。
インサイドセールスにおけるAI活用例
インサイドセールスの業務プロセスには、AIを活用できる場面が数多く存在します。ここでは、具体的なAI活用シーンとその効果について見ていきましょう。
<インサイドセールスにおけるAI活用例>
- 初期接触とフォローアップの自動化
- リードの選別と優先順位付け
- 架電内容のトークスクリプト作成
- ヒアリング内容の要約と自動記録
- 営業への引渡し基準の標準化
- コール内容の評価プロセスの自動化
初期接触とフォローアップの自動化
AIチャットボットによる一次応答や、顧客属性に応じてパーソナライズされたメールの自動送信など、AIによって顧客との初期接触を自動化することが可能です。これにより、問い合わせがあった際に、AIが基本的な質問に即座に回答することで、一次応答までの時間を大幅に短縮できます。
また、リードの行動履歴や属性に基づいて、AIが最適なタイミングでフォローアップメールを自動送信することで、商談機会を逃さず確実にアプローチできます。これまで手動で対応していた定型的な業務を自動化することが可能です。
リードの選別と優先順位付け
AIがリードのスコアリングを行い、成約可能性の高いリードを自動的に抽出することで、インサイドセールス担当者が手作業で行っていたリードの選別作業を自動化できます。
選別したリードに対して、Webサイトの閲覧履歴、資料ダウンロードの有無、メールの開封率、企業規模や業種といった属性情報をAIが総合的に分析し、各リードの優先度を判定します。
架電内容のトークスクリプトの自動作成
顧客の業界特性や過去の商談の成功事例を踏まえた、最適なトークスクリプト(アポイントや商談の台本)の作成をAIで自動化することも可能です。AIを活用すれば、優秀な営業担当者の商談データを分析し、そのノウハウを活かしたトークスクリプトを作成することもできます。架電前の準備時間の削減と、提案品質の向上を同時に実現します。
ヒアリング内容の要約と自動記録
インサイドセールスの通話ログをAIがテキスト化し、要点をまとめてCRM(顧客管理システム)へ自動で記録する仕組みを導入すれば、架電後の作業は記録内容の確認と手直しだけとなり、担当者の負担は大きく軽減されます。
これにより、次のアクションの検討や顧客対応に時間を割けるようになり、より本質的な業務に集中できる環境が整います。さらに、通話内容の要点が自動で抽出されることで記録の質が均一化され、情報の抜け漏れも防げるでしょう。
営業への引渡し基準の標準化
事前に設定したトスアップ基準に基づき、営業への案件引渡しをAIで自動化できます。AIがヒアリング内容やリードの質、商談化の可能性などを分析し、営業部門へ渡すべき適切なタイミングを自動で判定します。
これにより、従来は担当者の経験や感覚に依存していた判断をAIによって標準化することで、属人的なばらつきを解消。トスアップまでの滞留が減り、対応の遅れによる機会損失を防ぐ効果も期待できます。
コール内容の評価プロセスの自動化
インサイドセールスのコール担当者の評価について、従来は管理者が通話音声を聞きながらコール内容を評価していましたが、この工程をAIに置き換えることで評価にかかる工数を大幅に削減できます。さらに、評価者ごとに生じていたばらつきが解消され、公平で一貫性のある評価基準を確立することも可能です。
AIによる即時フィードバックが得られるため、改善点をスピーディーに業務に反映でき、インサイドセールス担当者のスキル向上にもつながります。
AI×インサイドセールスの効果は?導入企業の成功事例
AIをインサイドセールスに導入した企業では、具体的にどのような効果が得られているのでしょうか。ここでは、実際の導入成功事例を紹介します。
3つのAI活用でインサイドセールスを高度化
KDDIまとめてオフィス株式会社では、インサイドセールスの高度化に向けて3つのポイントでAIを活用しています。
①インテントデータを活用した架電対象の自動選定
インサイドセールスの架電対象の選定に役立つ、顧客のWeb行動履歴や経営課題、求人情報など膨大なインテントデータが蓄積されていましたが、手作業で活用するのは非効率で、せっかくのデータを一部しか活用できていない状況でした。そこで、データをカスタマーデータプラットフォームに統合し、AIで処理を自動化。担当者別・テーマ別・優先度別に日次で最適な架電対象リストが生成される仕組みを構築したことで、データに基づいた高精度なアプローチが可能になりました。

②架電内容サマリーの自動作成
AIの導入前は、インサイドセールスからフィールドセールスへの案件のトスアップの判断や、ヒアリング内容の要約作成に時間がかかっていました。また、担当者ごとに判断や記録の質にもばらつきがありました。AIが通話内容を自動要約し、担当者が手直しする運用に切り替えたことで、作業工数が大幅に削減され、記録品質も均一化。顧客との対話により多くの時間を割けるようになりました。
③フォローアップ架電の事前準備支援
過去に一度接点を持ったリードへのフォローアップ架電では、架電の目的の整理やヒアリング項目の検討に時間がかかり、ヒアリングが必要な内容の抜け漏れも発生しがちでした。そこで、AIで架電の目的や確認項目を整理し、提案内容のトークスクリプトを自動作成する仕組みを導入。準備時間を短縮し、ヒアリング内容の精度も高めています。
インサイドセールスにおけるAI活用の実践事例や、設計の考え方については、以下のコラムでも詳しく解説しています。
インサイドセールスのコール評価に生成AIを導入
ある金融機関の法人向けアウトバウンドコールを中心としたインサイドセールス部門では、メンバーのコール評価に課題を抱えていました。通話音声の確認から評価までをすべて人手で行っていたため、工数が膨大になり、評価できるコール数にも限界がありました。さらに、評価者による主観的なばらつきが生じることも課題でした。
こうした背景から、生成AIを活用した評価プロセスの自動化に着手。AIが通話内容を自動的に分析し、総合評価に加えて会話マナー、傾聴力、質問力、説明力、営業力、構成力といった6つの主要項目を基準に評価を行うようになりました。各項目について評価ランク(A~D)と判断根拠を自動生成する仕組みを構築することで、評価作業の効率化と品質の標準化を実現しています。

評価結果をインサイドセールス業務へ迅速にフィードバックできるため、インサイドセールス担当者は自身の改善点を素早く把握し、スキル向上に活かせるようになりました。応対品質の改善や顧客体験の向上につながるサイクルが生まれ、組織全体のパフォーマンス向上を実現しています。
インサイドセールスに必要なAIツール選定・導入のポイント
ステップ1:営業プロセス全体から課題を抽出する
インサイドセールス内だけで部分的にAIツールを活用しても、期待する効果は得られにくいものです。例えば、「マーケティング部門でリードの滞留があり、インサイドセールスの架電までに時間がかかる」「インサイドセールスからフィールドセールスへのトスアップが属人的で、商談化率が安定しない」など、部門をまたいだ課題が成果低下の要因となっているケースは多く見られます。
インサイドセールス部門だけでなく、マーケティングからカスタマーサクセスまで営業プロセス全体を俯瞰し、どこにボトルネックがあるのかを明確にすることが重要です。

ステップ2:部門間の分断を解消する視点から必要なAIを検討
AIツールを検討する際は、「顧客接点」「運用サイクル」「RevOps基盤」の3つの視点に注目するといいでしょう。「RevOps基盤」とは、各営業部門のデータやプロセスを統合管理するためのシステム基盤です。CRMやMAなどを連携させ、部門横断で収益最大化を目指す仕組みのことをいいます。3つの観点で必要機能を整理することで、部門間の分断をなくし、営業プロセス全体の生産性を上げるAIツールが見えてきます。
まず「顧客接点」では、初期対応としてAIチャットボットの活用や、顧客との通話データの要約・CRMへの自動登録などの機能が有効です。次に「運用サイクル」では、ABテストの自動化やプロセス改善のためのデータ分析など、マーケティング施策の精度向上につながるAIが役立ちます。そして「RevOps基盤」では、リードの重複検知・自動マージ、スコアリング・優先度付けなど、データ品質とオペレーション効率を高めるAIが中心です。

ステップ3:既存のツールと連携できるか確認
活用したいAIツールが見えてきたら、既存のCRMやMAツールなどと連携できるかを確認しましょう。システムが連携できなければ、データの二重管理が発生したり、業務効率が低下したりする可能性があります。
また、導入コストが予算に見合っているか、社員が使いこなせる操作性を備えているか、サポート体制が充実しているかといった基本情報も確認すべきポイントです。操作性については、デモ版やトライアルを活用して実際の使用感を確かめることをおすすめします。
ステップ4:対象範囲を限定して小さく始める
AIツールを営業プロセスのどこに配置して、どのような効果を得たいのか、理想的な設計ができたら、まずは対象範囲を限定して小さく始めることが重要です。例えば、インサイドセールスからフィールドセールスへの案件の引渡しに絞り、AIで条件を満たした案件を優先順位付けして、自動的に営業担当者へ割り振る仕組みを導入。その結果、案件の質が安定したり、引渡しまでの期間が短縮したりといった成果が得られれば、次はマーケティングからインサイドセールスに拡張するなど、段階的に範囲を広げていきます。
小さく始めることでリスクを抑えつつ効果を検証でき、必要に応じて改善を加えながら無理なくAI活用を定着させることができます。
まとめ
インサイドセールス業務にAIを活用することで、リード選別・情報入力・評価業務などの負荷が大幅に削減され、担当者はより価値の高いコミュニケーションや戦略的な判断に集中できるようになります。
しかし、AIツールを導入すべきポイントの特定や、数多くあるツールの中から自社に合ったものを選び、定着させるまでのプロセスには不安を感じる企業も少なくありません。
AI活用に難しさを感じる場合は、最適なツールとその組み合わせを提案し、導入から活用まで伴走できるサービスを活用するのも効果的です。ブリッジインターナショナルグループは、長年のインサイドセールスアウトソーシングで蓄積した知見をもとに、AIツールを含めた最適なテックスタックをご提案し、導入・構築から運用定着までを包括的にサポートしています。
よくある質問
インサイドセールスでAIを活用するメリットは?
インサイドセールスでAIを活用する主なメリットは、業務の効率化とコア業務への集中です。リードの選別やデータ入力といった時間のかかる作業を自動化することで、担当者は顧客との信頼関係構築や課題の深掘りなど、売上に直結する質の高いコミュニケーションに注力できます。また、架電内容やトスアップ基準の属人化を解消し、対応品質を標準化できる点も大きなメリットです。
インサイドセールスのAI活用例はどのようなものがある?
主な活用例として、チャットボットによる初期接触とフォローアップの自動化、架電内容のトークスクリプトの自動作成、AIによるリードのスコアリングと優先順位付け、通話内容の要約と自動記録、営業への引渡し基準の標準化、コール内容の評価プロセスの自動化などがあります。これらの活用により、業務時間の削減や商談化率の向上、部門間連携の円滑化といった効果が期待できます。
インサイドセールスでAIツールを導入する際のポイントは?
AIツール導入の際は、4つのステップを踏むことが重要です。まず営業プロセス全体から課題を抽出し、次に部門間の分断を解消する視点から必要なAIを検討します。そして既存のツールと連携できるか、コストや使いやすさは適切かを確認した上で、対象範囲を限定して小さく始めることがポイントです。段階的に成果を確認しながら展開することで、リスクを抑えた効果的な導入が実現できます。
インサイドセールスのことでお困りではありませんか?
インサイドセールスにおけるAI活用は、ツール単体ではなく、業務プロセス全体の設計と現場運用まで含めて考えることが重要です。
実際の現場では、どのようにAIを取り入れ、どの業務がどう変わっているのか。
具体的な事例やデモを通じて確認いただけます。
