ポストセールスの落とし穴に注意!駆け込みアップセル施策が裏目に出た話

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コラム
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ポストセールスにおける売り手と顧客の認識のズレを表したイラスト

はじめに

カスタマーサクセスの “収穫期”であるポストセールス。しかし、収穫を急ぐあまり「売り込み」色が強くなると、売上を失うのみならず、信頼を損ねて解約につながることすらありえます。

そこで本コラムでは、ポストセールスで起こりがちな失敗例をケーススタディとして紹介し、ポストセールスの本来の目的と、成果を無理なく積み上げるための考え方・取り組み方を整理します。

1. ポストセールスで陥りがちな「アップセル・クロスセル営業」という落とし穴

ポストセールスとは、カスタマーサクセスのプロセスの中でも契約更新や利用拡大につながる、いわば“収穫期”にあたるフェーズです。

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マーケティングからカスタマーサクセスまでの営業プロセスとポストセールスの位置づけを示す図

しかし、このポストセールスを「アップセル・クロスセルを取るため」「契約更新するため」だけの活動と捉えてしまうと、関係性を損ねてしまう危険性があります。

本来、ポストセールスで達成すべきことは「顧客の成功(最高の顧客体験を提供すること)」です。顧客がサービスを通じて成果を出し、継続利用する理由が明確になっている状態をつくることが主産物であり、契約更新やアップセル・クロスセルはその副産物と言えます。逆に言えば、顧客がまだ成果を実感できていない、運用が定着していない段階で声高に拡張提案をしても、その声は響かないばかりか、「売り込みを優先している」と捉えられて次の契約更新に対しネガティブな印象を残す可能性すらあります。

そこで次項では、ポストセールスで起こりがちな失敗をケーススタディ形式で取り上げます。売り手と買い手の認識がどこですれ違うのかを具体的に見ながら、改善のヒントを整理しましょう。

2. ケーススタディで読む、ポストセールスの“失敗談”

【A社の失敗談】期末限定キャンペーンの案内が裏目に…顧客が求めているのは“拡張”ではなく“課題解決”

A社では年度末が近づくと、営業現場では「目標必達!」のかけ声とともに、少しでも売上を積み上げようと必死の活動が続いていました。ポストセールス担当に対してもそれは同様で「今月中に何とかアップセル・クロスセルで売上をプラスできないか?」という流れとなり、「年度末キャンペーン」を実施することになりました。

そこでポストセールス担当者は、既存顧客に対して「今なら追加オプションが割引です」とキャンペーンについて案内。一方、顧客側はまだ現行プランの定着に苦戦しており、「成果が見えない」「社内に広がらない」といった課題を抱えていました。

アップセル提案を急ぐことで顧客の課題とすれ違う様子を表したイラスト

顧客は目の前の課題を解決できなければ先に進めないと考えているものの、キャンペーン訴求ばかり前面に出てしまったことで、顧客には「こちらの事情より売上都合なのでは」との悪印象が残り大きく信頼を損ねる結果となりました。その後、契約更新では競合比較や値引き交渉が前提になるなど、継続にも大きな影響を与えてしまいました。

<失敗ポイント>

  • 顧客の状態(定着・成果)や課題を確認せず、キャンペーン提案を先に出した
  • 提案の理由が「顧客の必然性」ではなく「売り手の都合」に見えた

<改善ポイント>

  • 提案前に現状の成果や課題など、提案の前提を確認する
  • “キャンペーン”ではなく「課題解決プランの1つ」として提案する
  • 提案タイミングは「顧客の状態」で判断する

【B社の失敗談】受注前の情報の引き継ぎ不足で関係性も悪化

B社では、いわゆる『THE MODEL』型の営業プロセス分業を採用し、マーケティングからインサイドセールス、営業、カスタマーサクセスまで、それぞれの担当を分けて効率的な営業体制を構築していました。しかし、部門間の情報共有が十分ではなく、受注前にヒアリングした「解決したい課題」「導入の優先順位」「社内の懸念点」が、契約後に情報共有されなくなってしまうという状況でした。

カスタマーサクセス担当は、更新や拡張の可能性を探るために顧客とのミーティングを設定しましたが、顧客側にとっては「また最初から説明し直しなのか」という違和感を感じるようになりました。加えて、以前の経緯を知らないまま、ポストセールス担当者がアップセルやクロスセルなどの提案が始まったことで、「この会社は売るときは親身になるが、その後は不親切だな…」という印象につながってしまいました。

部門間の情報共有不足により顧客対応がちぐはぐになる状況を示した図

結果として、この顧客は拡張提案には乗らず、更新のタイミングで「運用が落ち着いていないので見直したい」「他社とも比較したい」と距離を取るようになりました。

<失敗ポイント>

  • 受注前の顧客情報が契約後に引き継がれていなかった
  • ポストセールスの提案では、顧客理解が乏しく信頼失墜につながった

<改善ポイント>

  • 受注前〜受注後の情報を一気通貫で共有できる体制づくり
  • ポストセールスではこれまでの顧客の状況・課題を踏まえた提案を行う

【C社の失敗談】顧客との歩調が合わない提案…利用促進のつもりが売り込みに見えた

C社では、契約後の顧客に対して定着や利用促進を図るため、カスタマーサービスが定期ミーティングを行うルールになっていました。これが功を奏し、徐々に定着が進み運用が安定してくると、顧客は「しばらくは安定運用を維持したい」「成果を出すために緩やかに支援してほしい」と感じるようになりました。

一方、C社のカスタマーサービスはこの“安定”を拡大のためのフェーズと考え、定例ミーティングで提案の要素を増やしました。担当者は顧客にとって良かれと思ってのことでしたが、「さらに便利になる追加オプション」「上位プランへの切り替え」といった提案が増えていったのです。顧客側が求める形ではなくなり、会話の中身も徐々に変質していきました。

顧客の状況に合わない提案が売り込みと受け取られるポストセールスの場面イラスト

いわゆる「空気を読めない」提案が続いたことで、顧客には「状況を理解していない」「売り込みが目的なのでは」という印象が残り、次第にうんざりした空気が生まれていきました。

結果として、顧客は追加提案には乗らず、定例会にも消極的になりました。次第に関係性も薄くなり、更新のタイミングでは継続判断が揺らぐことになりました。

<失敗ポイント>

  • 顧客の求めるコミュニケーションと合っていない状態が続いた
  • 利用実態を踏まえず、会議が“支援の場”から“売り込みの場”に見えた

<改善ポイント>

  • ルールも重要だが、頻度や内容は顧客の状況に合わせて柔軟に設定
  • 拡張提案は条件が整ってから行う

3. ポストセールスの本来の目的とは?アップセル・クロスセルは“副産物”と考える理由

ポストセールスを失敗しやすい3つの共通点

ここまで見てきた3つのケースに共通する落とし穴として、ポストセールスの活動が「顧客の成功」よりも、「売る都合」が優先されたと受け止められたことが挙げられます。ポストセールスで失敗しないためにも、次の3つのポイントが重要です。

1つ目は、顧客接点を安定的に維持するための共通ルールをつくること。顧客に連絡する回数や会議体など、基本的なルールを作成し明文化することが必要です。

2つ目は、そのルールが形骸化しないための仕組みづくりです。情報を一元管理することや履歴共有、タスク管理などが挙げられます。これらはテクノロジーの助けを借りるということになるでしょう。

3つ目は、提案の前に顧客理解と信頼関係の構築から入るというマインドセットです。どこかが欠けていると、個々人の都合で顧客に連絡したり放置したり、場当たり的な提案をしてしまったりすると、関係性を損ねやすくなります。

ポストセールスの本来の目的は「顧客体験」にあり

改めてポストセールスの目的を述べるとすると、それは「最高の顧客体験(顧客成功)」です。ポストセールスのタイミングで顧客が最高の顧客体験を得られているからこそ、 “収穫”の時期が訪れるということです。これが、ポストセールスの“主産物”と言えます。

顧客が成果を出し、継続する理由が得られることで、契約更新やアップセル・クロスセルなど売上が “副産物”として得られやすくなるということになります。

これまで、『THE MODEL』型の営業プロセス分業の中で、顧客との関係性を「農耕型」のアプローチで積み上げてきた“収穫”のタイミングがこのポストセールスです。これまで地道に培ってきた顧客との信頼と実績を、ポストセールスでも受け継いで取り組み、顧客との関係性を維持することが次のサイクル(次の“収穫”)へとつながっていくわけです。

カスタマーサクセスの一連の活動のイラスト
カスタマーサクセスの収穫期「ポストセールス」は、なぜ重要? 収益を最大化させる持続的な関係構築のすすめより流用)

時間をかけて取り組んできた“収穫”を最大化し維持・拡大し続けることも、焦って取り組み失ってしまうことも、ポストセールスの時期にかかっています。もし、ポストセールスのタイミングで失敗したら、また「振り出しに戻って」マーケティングから長い時間と労力を積み重ねる必要があります。

ポストセールスは単なる売り込みの時期ではありません。次の収穫に向けて顧客を維持するタイミングでもあるので、それに向けて“主産物”である、「最高の顧客体験(顧客成功)」が提供できるように取り組んでみてはいかがでしょうか。

まとめ

本コラムでは、ポストセールスで陥りがちな失敗例をケーススタディで紹介しながら、アップセル・クロスセルを “副産物”として捉える視点を紹介しました。ポストセールスは“収穫期”だからと焦って売り込み過ぎると失敗の原因になりかねません。

顧客とのこれまでの信頼関係を維持することを念頭に、対話と提案を組み立てることが大切です。 ポストセールス本来の目的である「最高の顧客体験(顧客成功)」が得られるように取り組むことが重要といえます。

ポストセールスの進め方や具体的な改善方法を知りたい方は、事例資料やサービス紹介ページもぜひご覧ください。

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コンサルティングファーム等を経て2009年にブリッジインターナショナルへ参画。インサイドセールスの黎明期から提案営業やコンサルティングに従事。大手SaaS企業におけるインサイドセールス責任者として従事した経験もあり、アウトソース/インハウス両面でインサイドセールスに関する知見を有する。

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