テクノロジー×データで進化するレベニュープロセス:持続的成長のための実践(「BRIDGE FORUM 2025」より)

イベントレポート
コラム
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はじめに

企業の持続的な売上成長には、テクノロジーやデータの活用はどのように関わってくるのでしょうか。レベニュープロセスの中では様々なデータが発生しています。これを活用するためのテクノロジーが次々と進化している今、現場で成果につなげようとする動きが広がっています。本コラムでは、テクノロジーとデータを現場で真に成果に結びつけるための取り組みを行っている 2 社の実例をご紹介します。

なお、このコラムは、2025 年 10 月 21 日に開催された「BRIDGE FORUM 2025」のメインセッション「テクノロジー×データで進化するレベニュープロセス:持続的成長のための実践(ブリッジプロセステクノロジー株式会社 代表取締役社長 尾花 淳)」の一部をレポート化したものです。

BRIDGE FORUM 2025 の全体版レポートはこちら

テクノロジーとデータの活用で、レベニュープロセスはどう変わるか?

ブリッジプロセステクノロジー株式会社 代表取締役社長 尾花 淳
ブリッジプロセステクノロジー株式会社
代表取締役社長
尾花 淳

マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス…企業が営業活動を行うとき、レベニュープロセスの中では、様々なデータが発生しています。そのデータはテクノロジーが進化するほど、活用できる幅も広がっています。

今回のセッションで尾花は「テクノロジーやデータを使うことで、企業のマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの取り組みがどう変わっていくのか」についてゲスト企業を招き、話を伺いました。1 社目はマーケティング分野、2 社目はインサイドセールスの分野で、テクノロジーとデータを活用することでどのような変化が訪れたのかをご紹介します。

テクノロジーとデータによるレベニュープロセス進化の概念図

役立つデータを捨てていませんか?マーケティング分野での「テクノロジー✕データ」活用

まずはマーケティング分野でのテクノロジーとデータ活用について、エクスジェン・ネットワークス株式会社の取り組み内容を紹介します。お話を伺ったのは、営業本部 専務取締役 引間賢太氏(以下、引間氏)、マーケティング部 部長 前田祐一郎氏(以下、前田氏)。発足してからまだ日が浅かったマーケティング部門を、いかにデータ活用できる組織へと変革していったのかインタビュー形式でお届けします。

エクスジェン・ネットワークスの引間氏と前田氏が登壇し対談する様子
エクスジェン・ネットワークス株式会社 営業本部 専務取締役 引間 賢太 氏(中央)、マーケティング部 部長 前田 祐一郎 氏(右)。エクスジェンネットワーク社は、セキュリティプロダクトメーカーとしてID管理製品を中心に不正PC検知排除製品やPC情報管理製品などを提供している。

尾花● 今日はマーケティングの施策の評価・最適化にデータとテクノロジーをどう使っているのかをお聞きしたいと思います。まず、データを集約して施策評価などに使っていこうと考え始めたきっかけは何でしたか?

引間氏● 当初はマーケティングの仕組み作りに必死で、データの利活用までは考えられませんでした。徐々にマーケティング施策が軌道に乗ってきたところで、「多くのお客様が Web サイトに来ていたり、営業が案件登録したりと色々なデータが集まっている。そのデータを捨て続けているのはもったいない」という声があり、検討を開始しました。

前田氏●もともとリードや、営業案件の管理は全部キントーンにまとめていました。一方で、マーケティング部門がリーチするハウスリスト自体は、CMS(SiteMiraiZ)側にあり同期させることが難しい状況でしたが、Google の BigQuery をカスタマーデータプラットフォーム(CDP)として、すべてのデータを集約し分析できるようにしました。」

エクスジェン社のマーケティングデータフロー図(CDPへの統合)

尾花● データを集めて使えるようになった今と以前とでは、一番変わった部分はどこになりますか?

引間氏● 例えば、テストマーケティングとしてイベントに出展したところ、営業が新規リストを 50 件獲得し、そこから見込み客が 3 件出たことがわかるというように、その効果が時間軸も含めて把握できるようになりました。

つまり、接触数からリード、案件数、最後の受注まで、すべてのデータが一本化して見られるようになったことで、それぞれのマーケティング施策の価値が一目瞭然になりました。

来年の予算を取るときに、どの施策は必ずやるべきかとか、そういう判断の基準にも使えるようになりました。

施策別アトリビューションを示すダッシュボードの画面例

尾花● なるほど。マーケティング部から見て、このように数値で見えるようになって何が変わりましたか?

前田氏● これまではマーケティング予算の効果を経営層にどう見せるかに苦労していました。データから示せるようになったことで、施策ごとの価値を判断して幹部会にかけられるようになりました。また、将来のマーケティング計画を立てるときにも、どの施策が効果的なのか検討するのに役立っています。

Web サイトにしても、セッション数だけではなく、あるページを見た人がどの案件につながっているか、逆に、ある案件に対してどのページが貢献しているかとか、そういった角度でも見えるようになっています。

尾花● データに基づいてしっかり判断ができて、説明責任を果たせるようになったというところが一番大きいようですね。さらに今、AI を施策の評価に使い始めているとのことですが、実際使ってみてどうでしょうか?

前田氏● 今、機械学習の機能を使ってスコアリングを行っています。Web ページ閲覧とイベントやセミナーでは重み付けが違うですが、それぞれの区分ごとにイベントアクティビティごとの重みを考慮してスコアリングしています。それぞれの施策の貢献度が評価しやすくなるような取り組みをしています。

尾花● このようなテクノロジーやデータを使って、今後はどのように変えていきたいですか?

引間氏● 「データを捨てるのか?」という問いかけから始まり、いまやデータを使って機械学習し続けている状況まで来ました。今、営業で対面する以前の顧客はどのような行動をしているかがすごく気になっています。

例えば、長年オンプレミス製品を利用しているにも関わらず解約した顧客に理由を聞くと「クラウド化」ということだったりします。しかし、私たちもクラウドの製品を持っていて提案できましたので、お客様の行動に早めに気付くことができれば、また別の動き方ができたのではないかと考えています。テクノロジーやデータを活用することで、まだ見えない顧客の行動がわかるような効果を期待したいと思っています。

前田氏● マーケティングの観点からは、AI を使ってロストしそうなお客様を抽出したいです。また、マーケティングと営業との間、ナーチャリングやテレコールなど分担している部分の連携も AI に助けてもらいたいですね。そのためにも、データをたくさん集めることができていますので、今後もそのデータをどんどん活用していきたいと考えています。

エクスジェン・ネットワークスの成果事例を見る

インサイドセールスの高度化に向けた、3 つのポイントでの「テクノロジー✕データ」活用

次に、インサイドセールス分野でのテクノロジーとデータ活用について、KDDI まとめてオフィス株式会社の取り組み内容を紹介します。お話を伺ったのは、営業推進統括本部 デジタルマーケティング部 部長 加藤正人氏(以下、加藤氏)。インサイドセールスの高度化に向けて、どのように取り組んできたのかをインタビュー形式でお届けします。

KDDIまとめてオフィス加藤氏と尾花の対談シーン
KDDIまとめてオフィス株式会社 営業推進統括本部 デジタルマーケティング部 部長 加藤正人氏(右)。KDDIまとめてオフィス株式会社は、通信を軸にオフィスに関する様々な商材をまとめて提供することで、多様な働き方の実現を支援している。

尾花● 本日は、目下、取り組み中とお聞きしている「インサイドセールスの高度化」のうち、次の 3 つのポイントについてお聞きします。1 つ目は「架電対象の選定」、2 つ目は「架電結果の整理」、3 つ目が「ネクストアクション」です。

まずは 1 つ目の「架電対象の選定」ですが、インサイドセールスの架電対象を、自動的かつロジカルに選定していく取り組みについて教えてください。

加藤氏● 以前より、当社と契約している顧客、見込み顧客、潜在顧客それぞれの“解像度”を上げた状態で、インサイドセールスにより効率的にアプローチしたいと考えていました。契約管理、CRM、MA などの情報にプラスして、さらにインテントデータベース(3rd パーティーインテント)を導入しました。社外の Web サイトの行動履歴、経営課題、求人募集状況などの情報をインサイドセールスに活用しようと考えましたが、実際は手作業が大量に発生し、うまく回らない状況になってしまいした。せっかくデータが日々、大量に溜まっていますが、その一部しか使えない状況も改善する必要がありました。そこで、自動化の仕組みを入れようと決めました。

今はそれをカスタマーデータプラットフォーム(CDP)全部合体させて、インサイドセールスの担当者別、テーマ別、優先度別に日時でリストが出るような仕組みを作りました。

インサイドセールス架電対象選定のデータフロー図

尾花● 今までだいぶ苦労していたところを、テクノロジーが変わってくれるということですね。架電対象の質が変わったということですが、その次に課題になるのは電話をかけた後の処理だと思います。ここで、2 つ目のテーマ「架電結果の整理」についてはいかがでしょうか。

加藤氏● 電話を 1 本かけると大量の文字情報が発生します。架電した内容から、インサイドセールス担当者が「営業にトスアップ」なのか「トスアップできないがデータとしては蓄積」を判断するのには時間がかかります。また、人によって架電内容のまとめ方にばらつきが出ます。そこを AI の力を使って解決していきたいと考えています。

今は、この架電内容を AI でサマリーを作成し、人間が手直しする形です。インサイドセールス担当者のお客様と相対している時間を最大化したいので、架電の後工程は極力ゼロに近づけることを目指しています。

尾花●インサイドセールスのアフターコールワークをゼロに近づけてくことは重要な取り組みですね。では、3 つめの「ネクストアクション」についてお願いします。

加藤氏● フォローアップの架電内容を AI に示唆させようという取り組みを行っています。架電の事後に AI でサマリーを作成する工程と同様なのですが、フォローアップで架電する際の事前準備にかかる時間が削減できます。そうすると、お客様と相対する時間が増えることになります。架電目的、顧客に何をヒアリングすべきか、提案すべき内容、合意したい内容…などが抜けもれなく準備できるので、フォローアップでの架電の品質が上がってくることを期待しています。

尾花● ありがとうございます。最後に、今後インサイドセールスの領域にどのようにテクノロジーやデータを活用していきたいか教えてください。

加藤氏● 本格的な取り組みはこれからですが、色々なデータが集まってきていますので、こうしたデータを活用してお客様の“解像度”を上げることが一番の目標です。あとは、新しいテクノロジーにアンテナを張って、良いものを取り入ることも続けていきたいと考えています。

た。

フィールドセールスのテクノロジーとデータ活用で「活動記録の自動化」とその先へ

マーケティング、インサイドセールスの領域に続き、最後に尾花がフィールドセールスのテクノロジーとデータ活用について解説しました。

現在、多くの企業が CRM を導入しています。その目的は、「顧客との良好/適切な関係を管理していくことで、売上を増やし、LTV を上げる」ことですが、「人的な活動履歴の登録が進まないのが CRM 登場以来の課題」と尾花は問題提起します。

CRMで人的登録が進まない課題を示すスライド

一方で、尾花は「現在すでに電話の内容やオンラインミーティング、会議の録音などを活動記録として自動的に CRM に取り込むことが実現可能になっています」と語ります。

さらに、この取り込まれたデータにより「活動記録を材料に AI により商談フェーズを自動更新する」することもできるようになっていると付け加えます。例えば、電話の通話内容から内示の連絡があったと AI が判断したら商談を更新したり、AI エージェントが次のアクションを示唆したりすることが実現可能なのが現状と言えます。

活動記録の自動化とAIによる商談更新を示したスライド

まとめ

今回は、「テクノロジー×データで進化するレベニュープロセス:持続的成長のための実践」というテーマで行われたセッションを紹介しました。

テクノロジーとデータを活用することで、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、そしてカスタマーサクセスも含めたレベニュープロセスを絶え間なく進化させることにつながります。こうした取り組みが、継続的な売上成長につながっていくのではないでしょうか。

テクノロジーとデータで売上成長を示す矢印グラフ

※アーカイブ動画では、営業電話の音声を自動で Salesforce に取り込み、AI が会話内容を解析して案件更新や次アクションをリアルタイムで提案するデモをご覧いただけます。
「活動を登録する」から「データを活かす」へ──レベニュープロセスの進化を体感いただける必見の内容です。

▶ このセッションをもっと詳しく見る

また、今回のFORUMのうち下記セッションについては、さらに詳しい内容を紹介しておりますので、ぜひお読みいただき、今後の取り組みの参考にしてはいかがでしょうか。

全体版 『【イベントレポート】BRIDGE FORUM 2025│Maximizing Revenue 〜持続的売上成長へ—仕組みとAIの再設計で成果を最大化〜』
メインセッション-2 『「AI×仕組み」で切り拓く売上成長の新常識 〜レベニュープロセス分業の再考〜』
ブリッジプロセステクノロジー株式会社 取締役副社長 北村 寿雄
メインセッション-3 『営業プロセスは「分けて、磨く」:インサイドセールスが実現する最適解』
ブリッジインターナショナル株式会社 代表取締役社長 八木 敏英
メインセッション-5 『未来の人材戦略を考える:提案型スキル×AI活用×マネジメント』
株式会社アイ・ラーニング 代表取締役社長 杉山 真理子

2002年の設立以来、インサイドセールスによる法人営業改革の支援を行ってきた「ブリッジインターナショナルグループ」。日本におけるインサイドセールスのリーディングカンパニーとして、IT、通信・情報、流通、製造などの幅広い業種の企業に対し、「仕組み」「リソース」「道具」などさまざまなインサイドセールスのサービスをご提供し、多くの実績を積み上げてきました。当コラムは、多数のクライアント企業でインサイドセールス組織の立ち上げ・導入支援・MA活用支援などに携わってきたコンサルタントが、これまで蓄積したノウハウを元に執筆したものです。

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