“完結型”のインサイドセールスとは? 分業の“壁”を超える3つのインサイドセールス活用タイプ

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“完結型”のインサイドセールスとは? 分業の“壁”を超える3つのインサイドセールス活用タイプ

はじめに

『THE MODEL』型の営業プロセスで分業化されたインサイドセールスというと、「マーケティング部門が獲得したリードを育成し商談を創出し、営業に引き渡す」というイメージが強いかもしれません。しかし、実はインサイドセールスの活用の幅は広く、時にはクロージングを担う場合もあります。

本コラムでは、分業化された守備範囲にとどまることなく、柔軟にインサイドセールスを捉えることで見える新たな価値について紹介します。

1. 『THE MODEL』は誤解されがち? 分業がゴールではない

『THE MODEL』型の営業プロセス分業が広がっている

日本の営業組織は長らく「先発完投型」が主流でした。「先発完投型」とは、担当顧客を持った営業が見込み客の発掘から育成や提案、クロージング、アフターフォローまで一気通貫で担うスタイルを指します。しかし、顧客の購買行動がオンラインとオフラインを行き来し、検討プロセスも複雑化するなかで、ひとりの営業がすべてを担うのは難しくなってきました。

こうした時代の変化を後押ししたのが、2019 年頃に提唱された『THE MODEL』でした。『THE MODEL』は営業変革を検討する企業を中心に受け入れられ、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスと役割を分業する動きが、2020 年代に入りさらに広がることになりました。

▼『THE MODEL』型営業プロセスのイメージ

『THE MODEL』型営業プロセスのイメージ

プロセス分業することで挙げられる代表的な効果として「専門性の向上と効率化」が挙げられます。例えば、インサイドセールスはリードの初回対応からリード育成や商談創出に、フィールドセールスは商談に専念できるでしょう。

また、プロセス単位での指標設計が行いやすくなる点も挙げられます。インサイドセールスでは「リード対応数」「商談化率」などが KPI として設定される場合が多く、このように数値化することで改善に向け PDCA を回しやすくなります。

ほかにも、新入社員や新任担当者は最初にインサイドセールスを経験して営業プロセスを理解し、その後にフィールドセールスに異動するようなケースも見られるようになりました。つまり、分業化することでキャリアパスを設計しやすくなるというメリットがあるというわけです。

『THE MODEL』型分業の“功罪”

しかし、『THE MODEL』型の本来の意図が誤解されてしまい、プロセス分業が目的化してしまうケースもあるといいます。その最大のデメリットとしては、「分業」が「分断」になってしまうことではないでしょうか。先程、プロセスごとに KPI が設定しやすいと述べましたが、その反面、各部門がそれぞれの KPI 達成だけに目が向き、全体が見えなくなってしまうパターンです。

では、具体的にどのようなデメリットが生じてしまうのか、実際の例をもとにいくつかご紹介します。

マーケティング → インサイドセールス → フィールドセールス → カスタマーサクセス の流れ図

ケース1:プロセス間での信頼関係の喪失
インサイドセールスに設定されている KPI は達成が難しく、「数」を追うことに終始してしまいがち。しかし、フィールドセールスには「質が悪いリードばかりなので使えない」と放置されてしまうケースが多い。その結果、フィールドセールスからの信頼関係が失われてしまい分断が深まってしまった。

ケース2:引き渡し条件の厳格化により関係性が育めない
インサイドセールスからフィールドセールスにリードを引き渡す際の条件となる項目(クライテリア)が多く、すべてそろっていなければフィールドセールスが受け取ってくれない。その結果、インサイドセールスは機械的に「項目を埋める」作業になってしまい、顧客との関係構築という本質的な価値を育てることができない。

ケース3:伝わる情報に限界があり関係性が薄まっていく
インサイドセールスが苦労して関係を構築した顧客でも、SFA に残されるのは架電回数や課題といった端的な情報。顧客の期待値や信頼感など、会話の「行間」の引き継ぎが難しく、プロセスを細かく区切るほど積み上げた関係性が薄まりやすい。

このように、『THE MODEL』型を目指して分業を進める一方で、役割を“区切る”ことに意識が向き過ぎることで失われてしまう価値がある可能性があります。その 1 つが、インサイドセールスの価値を十分に発揮できないことかもしれません。次項では、インサイドセールスが他のプロセスのどこまでを担えるのか、その守備範囲と立ち回り方を整理しながら、「分業の“壁”を超える活用法」を考えていきます。

2. 分業の“壁”を超えるインサイドセールスの活用法

インサイドセールスはどこまで担える? 3つのタイプで整理する

インサイドセールスを活用する際に、実はいくつかのタイプに分けることができます。ここでは代表的な 3 つのタイプについて紹介します。

タイプ① ステージ分担型(バトンリレー型)
インサイドセールスとフィールドセールスが、ステージごとに役割分担する、一般的な分業の型です。プロセスを完全に分けて担当することで専業化と効率化できることがメリットです。インサイドセールスは見込み発掘〜育成に対応し、フィールドセールスは提案〜クロージングを担当します。

専任化によって生産性を高めやすい一方、引き継ぎや差し戻しの設計が甘いと、分担ライン上で顧客が“放置”されるリスクがあります。また、全体の責任の所在が曖昧になりやすいため、プロセス全体を見渡したマネジメントが前提条件になります。

スムーズにフィールドセールスに引き継ぐためにも、初回商談はインサイドセールスが担当するというようなケースもあります。

インサイドセールスとフィールドセールスがステージごとに分担するステージ分担型モデルの図

タイプ② 顧客分担型
顧客セグメントに応じてインサイドセールスとフィールドセールスが、それぞれの顧客を分担しながら受注まで一気通貫で対応する型です。企業規模・地域・商材・契約状況などの「顧客セグメント」によって担当する企業が分けられます。

インサイドセールス“完結型”として、低単価商材や遠方の顧客対応、休眠顧客の掘り起こしから商談に進みクロージングまで行うという運用が一例です。

引き継ぎが不要なため案件管理がしやすく、売上目標を直接持たせやすいのがメリットですが、インサイドセールス側にも提案〜クロージングまでのスキルが求められる点がハードルとなる可能性があります。

顧客セグメント条件に応じてインサイドセールスとフィールドセールスが分担する顧客分担型モデルの図

タイプ③ 個別チーム運営型(二人三脚型・ハイブリッド型)
「インサイドセールス:フィールドセールス」を「1:1」〜「1:3」程度になるようにチーム編成し、同じアカウントやテリトリーを二人三脚で攻める型です。チームごとにアカウントプラン/テリトリープランを持ち、顧客状況や案件状況に応じて、どちらがフロントに立つかを柔軟に切り替えます。作業負荷の配分を最適化しやすく、複数担当者によるフォローで顧客満足度も高めやすい点がメリットです。

一方で、運営の仕方次第では生産性にばらつきが出たり、役割分担が曖昧になってインサイドセールスが営業の補佐のようになりその価値を活かしきれなかったりする場合もありますので、チーム内の設計とマネジメントが鍵になります。

インサイドセールスとフィールドセールスがチームで協働する個別チーム運営型モデルの図

▼参考リンク

完結型(顧客分担型)の「顧客セグメントによって分担する方法」については、こちらの記事をお読みください。
インサイドセールスの手法・やり方

3. 分業ではどのタイプを選ぶべき?──顧客に合わせて「体験設計」から決める

「型」から考えるのではなく、顧客体験から逆算する

前項で取り上げた 3 つのタイプは商材によって向き不向きはありますが、「自社はどのタイプにするか」で選ぶというより、「どんな顧客に、どんな体験を届けたいか」によって選ぶべきと言えます。特定のタイプに固定して考えるのではなく、顧客視点で購買プロセスを想定して、そこから逆算して選ぶべきでしょう。

例えば、この商材は受注までにはプリセールスとフィールドセールスが熟考して提案する必要があり専門性が必要というならば、「ステージ分担型」で完全分業にすべきでしょう。

一方で、同じ企業の中でも商材によっては「信頼関係を丁寧に作っていきたいから二人三脚型で」、「インサイドセールスである程度完結できるので顧客分担型で」と変えるなど、顧客視点で考えてタイプを選ぶのが理想的です。

顧客の購買プロセスに対してステージ分担型・顧客分担型・個別チーム運営型の対応範囲を比較した図

インサイドセールスは「顧客体験を設計する」役割を担う

リードに対して最初の窓口となり、双方向に対話する役割を担うことが多いインサイドセールス。インサイドセールスは初期からリードと対話し続けて、その反応や温度感、会話の“行間”まで把握しながら、信頼関係を構築していきます。

このようなインサイドセールスだからこそ、「この顧客に対し、次は誰がどう動くのがベストか?」と判断する材料を持っているとも言えます。つまり、インサイドセールスがフィールドセールスやカスタマーサクセスなどを巻き込みながら、顧客との信頼関係の育成をリードする…ということも可能なのです。

プロセス分業は、ともすれば機械的な役割分担となり、分断により顧客の信頼失墜を招く危険性もあります。インサイドセールスが培ってきた信頼関係をさらに育てていくためにも、「インサイドセールスが顧客体験を設計する役割」と位置づけることも一案です。

分業の“壁”を越え、営業プロセス全体を最適化するためにも、改めてインサイドセールスを柔軟に捉え直してみてはいかがでしょうか。

▼参考リンク

営業プロセスにおける課題解決策を、日立ソリューションズ、フォーティネットジャパン、三井住友カードの実践事例と共に解説したこちらの動画もぜひご覧ください。
営業プロセスは『分けて、磨く』:インサイドセールスが実現する最適解

まとめ

『THE MODEL』型の営業プロセス分業は「専門性の向上と効率化」といったメリットがある反面、絶対視してしまうと分断を招くおそれがあります。

本コラムでは、インサイドセールスを商談創出までに限定せず、商談や顧客属性によってフィールドセールスとのあり方を柔軟に変えることで、顧客体験の向上や受注にもつながることを紹介しました。

インサイドセールスの手法や仕組み化のヒントを知りたい方は、事例資料やサービス紹介ページもぜひご覧ください。

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2002年の設立以来、インサイドセールスによる法人営業改革の支援を行ってきた「ブリッジインターナショナルグループ」。日本におけるインサイドセールスのリーディングカンパニーとして、IT、通信・情報、流通、製造などの幅広い業種の企業に対し、「仕組み」「リソース」「道具」などさまざまなインサイドセールスのサービスをご提供し、多くの実績を積み上げてきました。当コラムは、多数のクライアント企業でインサイドセールス組織の立ち上げ・導入支援・MA活用支援などに携わってきたコンサルタントが、これまで蓄積したノウハウを元に執筆したものです。

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