<第2回>購買行動の変化と営業スタイル

インサイドセールス TIPS
コラム
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顧客の購買行動は時代と共に変わるものですが、それに合わせた営業スタイルとは、一体どのようなものでしょうか。

営業活動をより効率的に行うために、マーケティング、インサイドセールス、営業の3つに役割を分担するスタイルは、革新的な組織再編成と言えます。
今回のコラムでは、分業化におけるMAの役割と、分業化体制に必要な基本的要素についてご説明します。

分業化体制とMarketing Automation(MA)の活用

Marketing Automation(MA)のB2B企業への導入が2014年頃から本格化してから5年ほどたちます。PardotやMarketoなど主要なMAツールが国内でも利用され始め、一部業種では急発展を遂げ、テクノロジーの導入には保守的とされる業界でも徐々に導入が始まっています。

MAは主に、マーケティング部門で保有するリードに対し、最適な情報をタイムリーに出し分けし、リードの態度変容を促すこと(リードナーチャリング)を目的に使われています。ですが、先進的な企業とそうではない企業で、営業効率性に差が見られるようになってきました。(MAツールの導入が早くても、組織や体制、役割の持たせ方の整理が不十分な企業では、単なる大量メールの発信ツールとして認識されていることが多く、活用が進んでいる企業とそうではない企業で、明暗がはっきりしてきています。)

普及が進んでいる企業の特徴:

  1. MAを活用するデジタルマーケティングチーム、インサイドセールスチーム、営業チームなど分業化体制で各チームの役割が明確に整理され、予算とリソースが確保されている
  2. 組織(特にビジネスユニット/部門)での数字の組立意識が強く既存顧客からのリテンションの効率性の良さが理解されており、尚、その優良顧客を創造するために狙った顧客との新たな取引が必要だと感じている
  3. 営業担当個々の数字意識が強く、受注活動に注力したい営業が多く、真剣にインサイドセールスとターゲット策定に取り組んでいる

普及が進んでいる企業には他にも特徴がありますが、MAやインサイドセールスを踏まえた組織全体で標準的なステージの定義、各ステージでのタスク、遂行主体が明確に存在し、統制が取られている企業ほど、普及が進んでいる傾向が見られます。そこには、各ステージでどのような活動を行うべきかをチェックリスト化し、チェックが何個以上ついた場合に次のリードや案件ステージに昇格させるなど、というところまで徹底しているところもあります。インサイドセールスとフィールドセールスの協調の重要性と3つのメリット

共通の目標を持つことで、より売れる組織になる

従来営業とマーケティングが対立することが多かったことが要因で、マーケティングで大量に獲得したリードを営業にパスしてもまったく対応してくれない、ウェブページにコンテンツを掲載しPVは上がりそこからの問い合わせを営業にパスしても対応してくれない。また、営業からしてみればもっと受注できる案件を持ってきてくれ、顧客を知っている営業のフィードバックをマーケティングでのコンテンツ制作に活かしたいから時間が欲しいと言われてもそんな時間はないなど様々な行き違いが発生していました。

しかし「ターゲットした企業からの受注」という共通の目標に向かうことでプロモーションから提案まで一貫性が生まれ、ムダが大きく省かれると考えられます。
また、営業はターゲットした企業からの受注にコミットし、マーケティングはターゲットした企業のリード創出を目的として活動を行い、インサイドセールスはそれらのリードからの案件化に向けた活動を行う、というそれぞれの役割が一つのプロセス上で繋がるということはムラや抜け漏れ、齟齬の発生を防ぎ、協力体制が生まれ、より多くの案件機会の創出に繋がりやすい体制が作られると考えられます。

中長期的な施策から、マス的なアプローチを行うマーケティング。そこから温度感の高い企業を抽出し、中期的に一定の汎用性を持たせた1:1の訴求を行うインサイドセールス。短期的に課題や背景の特定できた企業へ特別な提案を実施し、クロージングを行う営業。
このように、役割によって時間軸に違いが生じます。しかし、一つのプロセス上での分業化体制の構築は、異なる時間軸のプロセス上でも連携が可能になります。

分業化体制に必要な基本的要素

以下に分業化体制の構築成功までのエッセンスについて説明します。

  1. 商材やサービス毎を利用する人、組織、その組織の課題、改善することでどのようなメリットを得ることができるのか、改善の緊急性や重要性の検証(マーケットリサーチ)
  2. 上記を踏まえ、どれに該当する企業がどれくらい存在するのかをバイネームでノミネートし、母数を正確に把握する=セグメンテーション(業種、業態、企業規模のようなセグメンテーションではなく、団体、政府、イニシアティブ、調査結果、転職サイトなどでリスト化されている場合が多くあるので利用が可能)
  3. 企業数を把握した後、実際に保有しているリード数とそうではないリード数を把握し、新たに獲得する必要があるのかないのかを明確にする
    1. マーケティングのKPIとして、リードが足りないのであれば、ターゲットした企業のリードをどれほど獲得できたのかが一つのKPIになる
    2. リード母数が一定数以上あるのであれば、そこからの育成でターゲットした企業からどれほどホットリードを創出できたのか(どれくらいQualificationを満たしインサイドセールスにパスできたのか)がKPIになる
  4. インサイドセールスはマーケティング活動でQualificationを満たしたホットリードに対してコール活動を行い、顧客環境のヒアリング、課題のヒアリング、必要な情報のインプットを行いながら案件Qualificationを満たす状態のリードの育成と抽出を行う
  5. 営業は案件化のQualificationを満たしたリードの対応を行い受注に向けて案件を推進する。(この際の営業のKPIは受注金額、受注件数)

今回は分業化体制に必要な基本的な要素について説明しました。
また、そのキーになる考え方は、共通のターゲット、ステージ定義、遂行主体の定義の3つになります。

次回以降、細かい部分の解説を行っていきます。

tsuji

ブリッジインターナショナル株式会社
マーケティング&コンサルティング本部
コンサルティング部
シニアコンサルタント
辻 博允(Tsuji Hironobu)

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