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インサイドセールスは、営業・マーケと横並びにすべし
インサイドセールスを本来の目的どおりに機能させるには、組織作りも大きなポイントだ。図表1-8「新営業組織」にあるように、インサイドセールス本部と営業本部、マーケティング本部は、横並びの組織として権限と責任を与えることが重要である。
インサイドセールス本部の主な目標は、今期のための売上貢献というより、来期、再来期の案件作りである。同じ営業組織なのだから営業本部に所属するのが自然じゃないかと思われがちだが、そうなると、仮に今期の売上が厳しくなれば、インサイドセールスの活動も今期の売上に少しでも貢献できるようなものにシフトさせられるだろう。これはある意味では自然な選択かもしれない。だがそれではインサイドセールス本来の目的を達成することができなくなり、会社としても悪いスパイラルから脱却することはできない。また、マーケティング本部とも対等な立場で連携して活動することで、はじめてインサイドセールスは有益なものとなる。
経営者は、今期の売上目標達成に関しては従来の営業本部を叱咤激励し、一方でインサイドセールス本部に対して、次の四半期で取れそうな案件をあと5,000万円、その次の四半期で取れそうな案件を2億円、さらにその次が3億円と、この先一年間で獲得できそうな見込み案件を、各四半期、各製品・サービスごとに今期中に積み上げろと指示する。この新たな営業組織を組むことにより、足元の売上の確保とこの先一年間の売上予測を確実に立案することが可能になる。
また、案件の積み上げが不調の際は、活動の改善指示をする以外にも、競合他社の動きを深く研究したり、価格が市場に合っているのかなどを見直したりと、インサイドセールスの立ち位置が、経営の先を読む上でも重要な要素となり得るのである。
【当社事例①】大手総合金融会社の場合
当社は、2014年から3回、インサイドセールス研究会という、日本市場におけるインサイドセールスの普及を目的にしたセミナーを行なってきた。インサイドセールスが新しい営業モデルとして認知されるようになってから、インサイドセールス研究会への関心も高まっている。
参加者は年々倍増していて、2016年秋の研究会には、大手総合金融会社の常務執行役にもご講演いただき、セミナーを大いに盛り上げていただいた。
この企業は、千葉県幕張市の事業部でインサイドセールスを行っている。インサイドセールスセンターには、現在150名ほどのスタッフが常駐し、電話やWebを使って全製品の営業を行なっている。このグループ会社は、不動産から金融サービス、自動車、エネルギーサービスなど、さまざまな商品やサービスを取り扱っている。幅広い商品を扱い、インサイドセールスに関心も高く、当社もセンターの立ち上げに関わらせていただいた。
この企業では、顧客との良好な関係を構築するとともに、顧客の状況や潜在・顕在の悩みやニーズを把握し、課題を解決しながら契約に結び付けるカバレッジ営業を行っているが、これこそまさに、インサイドセールスの本領を発揮できる営業形態と言えるだろう。
【当社事例②】世界最大手・建設機械製造メーカーの場合
もう一つ事例を紹介しよう。
それは、世界最大手の建設機械製造メーカーの日本法人であり建設機械の開発・生産・販売をしている会社だ。この企業は顧客のニーズに対応するため製品の改良を続けている、ソリューションカンパニーである。また、建設機械の他にも、鉱業用機械、ディーゼル電気機関車などの製造においても業界をリードしている。
この企業は、世界規模で事業を行う一方、全国の中小企業に向け、インサイドセールスで「貴社の工事現場で当社の機械を使いませんか?」という営業をかけている。大手企業ということにあぐらをかくことなく、新規顧客の開拓にも力を入れているこの企業の発想は素晴らしく、実際に、インサイドセールスから獲得した顧客との付き合いは非常にうまくいっているようだ。この事例からも、インサイドセールスはIT企業だけではなく、あらゆる企業にマッチすることがお分かりいただけるかと思う。
当社主催のインサイドセールス研究会について
なお、当社の研究会では、すでにこの営業モデルを導入している企業や導入を検討または研究している企業にも参加してもらい、現場の方々との意見交換なども積極的に行っている。研究会の参加者が増えているのは、活発な意見交換の場にもなっていることへの魅力もあるからだろう。ちなみに2017年11月に開催する第四回研究会は、300名のご来場を予定している。
このように、日本でもすでにインサイドセールスは広がりを見せているが、その広がりは大手企業から中小企業にまで多岐にわたる。企業の売上アップがなかなか見込まれない中、さらなる強固な営業の仕組みが求められている。そのニーズに対応できる営業形態こそが、インサイドセールスなのだ。