この10年で、B2B営業手法が大きく変わったと感じている方も多いのではないでしょうか?
営業活動をフェーズ管理や活動管理で一つの定義の元、案件や顧客の状態を記録し、科学的に管理していく文化が業界によってはかなり定着してきています。
また、Marketing Automation(MA)により対面では把握できない顧客(潜在顧客)の行動をデジタルで把握できるようになった結果、営業が一から課題喚起を行う必要もなくなり、営業が、クロージングなど案件の後期フェーズに時間をより使えるようになったと感じるようになった企業も多少出始めている様です。(ただ実際はまだまだ多くの企業で、MAはただのメール配信ツールになってしまっているという声を多く聞きます。)
一方、案件化に向けた営業活動(=ナーチャリングプロセス)の観点では、インサイドセールスという概念(アポ取得活動ではありません)も定着しつつあり、実際に内製化を開始している企業も増えてきています。
営業が受注に向けた顧客との合意形成(=クロージング)に集中できるよう、パイプラインの構築をインサイドセールスが行います。また、インサイドセールスのパイプライン構築を効率化させるために、MAを使いニーズの予兆がある企業へ優先的にコンタクトを取るなど、従来営業がやってきたことが大きく、MA、インサイドセールス、営業の3つの役割分担をし、効率性を上げる、分業化体制という考え方が徐々にB2Bセールスに普及しつつあります。
特に、昨今のSales & Marketing分野やスタートアップ企業の参入が多い市場やセグメントで多く見られるのが、MAを活用したメール配信です。また、キュレーションやオウンドメディアを通じて様々な有益な情報が掲載されています。このような市場では、買い手となる企業担当者は情報に困ることはまずありません。それどころか、洗練されたホワイトペーパーの流通も盛んで、望んでいる以上の「ノウハウ」までも簡単に手に入るようになっています。
そのような中、営業に訪問してもらい一から製品紹介や自身の課題喚起をされても、既に知っていて何も珍しいことがありません。顧客はネットにより取り組みの優先度を決めるための情報を十二分に持っている状態です。従って、購買行動も顧客担当者は自力で情報を集め次に具体的にどの商材やサービスについて優先的に検討し、予算を執行していこうかを決めることができます。
では、どのようにすれば「顧客の施策優先度を上げる」「施策の中の投資として優先的に自社の商材を選んでもらう」ことができるでしょうか?
何度もメールを送信した、何度も電話をした、足しげく営業が訪問をしたなどでは、ほとんどのケースでうまく成果に結びつきません。根気強く行った結果、たまたま選んでいただくこともあるかもしれませんが、それは稀で効率が良いとは言えません。
重要な点は、無作為に情報を与えるのではなく、担当者のミッションにどれだけ寄り添った情報を与えることができているかです。それを定量的に表すとすれば、担当者が何度、「うん。そうこれ、自分のことだ」と思わせることができるかです。ただ、その中で一つでも、「これは自分のことではない」と思われた時点で減点になり、心が離れていきます。この加点減点を繰り返しながら、最終的に顧客が自ら情報を集め検討を進めていく中で、この会社は自分のことを良く分かってくれていると思った瞬間に、担当者の気持ちは粗決まっていると考えても過言ではありません。これが「エンゲージメント」という考え方です。従って、ブロードキャストしたメルマガをターゲットせずに配信してしまうと、ものすごい数の減点が発生するということは避けられず、直ぐに改善できないにせよ、頭の片隅には置いておくべきです。実はこれは従来営業がやってきたところの所謂ラポール形成に非常によく似た考え方になります。つまり、顧客の購買行動がネットで情報を集める習慣になりつつある中、営業が従来のプロセスで活動をすると、顧客の気持ちが離れていくということも十分に考えられるということです。
もし「どうも最近営業のヒット率が悪いな」と感じましたら、まずは顧客の購買行動や情報収集の行動がどのような傾向にあるのかを探ってみるのも良いかもしれません。
また、顧客のサブマリン的な検討プロセスの行動は、営業活動やインサイドセールス活動では把握しづらいネットでの行動情報(アクティビティ)を元に把握することができますので、MAを導入している場合、真っ先にタギング量を増やし、アクティビティを分析することをお勧めします。MAの導入がまだの場合、既存客にインタビューするのも効果的です。
また、別の回で紹介しますが、事例は非常に使えるもので、また、事例取材の時間は大変貴重です。リファレンスを獲得できるだけでなく、何故買ったのか、どのように進めて来たのか、どんな人が意思決定者で稟議プロセスはどんなものだったのかなど、貴重な情報を多く手に入れることができます。また、そこで顧客との接点を増やすこともできますので、事例取材の勧めと、限られた時間で何を話すべきかについて、別の回で紹介させていただきます。