BtoBマーケティングでは、一方向からの情報の発信によって効果を生み出すケースはあまりありません。購入側も複数人で理性的な意思決定を行うため、フェアで正しい情報を定期的に提供して、双方向なコミュニケーションでお互いのパーミションを高めることが重要になります。
そこでカギになるのが、コンテンツマーケティングです。企業側からの情報の配信だけでなく、今日の情報収集の主流となった検索行動をうまく取り入れ、オープンに提供されたコンテンツによって、理解促進や行動喚起、また、認知度向上やブランドイメージの向上を目指すコンテンツマーケティングの成否が、BtoBマーケティングの成果に大きく影響を与えることになるのです。コンテンツマーケティングとBtoBマーケティングの関係性や、成功例についてまとめました。
目次
コンテンツマーケティングとは?
コンテンツマーケティングとは、Web上のコンテンツ(記事、動画など)によって見込み客を集客・ナーチャリングし、購買、さらにはファン化へつなげるマーケティング手法を指しています。検索エンジンを利用して情報収集することが一般化した現代において、コンテンツマーケティングを取り入れるのは不可避な流れと言ってよいでしょう。
コンテンツマーケティングの実施にあたっては、Webサイトにコンテンツを設置していくことが基本となります。コンテンツは、必ずしも商品の売り込みに直結する内容に限りません。むしろ、企業姿勢やブランドの価値観がよく伝わるような、読み物として顧客となるユーザーにとって有益でありホスピタリティに富んだもの、例えば「単純に面白い・興味深いもの」がその対象となることも少なくありません。
そのコンテンツに興味・関心のある層のアクセスを集め、エントリーフォームやランディングページを経由してメールアドレスや氏名・社名などのその顧客の属性情報を段階的に入手していきます。入手したデータに対してナーチャリング施策を打つとともに、コンテンツを充実させることで興味・関心を引き出し、最終的にファンにつなげることが目的です。
また、コンテンツマーケティングのコンテンツとしての質を極めることができれば、検索した際の検索結果が上位に表示されることになります。検索結果上位に表示させることができれば、当然、アクセスしてきた見込み客(プル型のアクセス)は、一方的な情報発信によるアクセス(プッシュ型のアクセス)よりも、能動的に求めていた情報を入手することができ、企業にとっても質が高い顧客ということになります。さらに、広告と比べ一過性ではなく積み上げ式で集客のパワーを保持することが可能になり、数か月・数年にわたって濃い見込み客を集客という恩恵を受けることが可能になります。コンテンツマーケティングは、正しい手順と地道な積み上げを行うことで、どの企業でも実践できる取り組みであると同時に、他の集客手法に比べて高い費用対効果を期待できる取り組みであるといえます。
コンテンツマーケティングとBtoBマーケティングの関係性
BtoBマーケティングにおいて、コンテンツマーケティングは必須とも言うべき要素です。逆に言えば、コンテンツマーケティングはBtoCよりBtoBに適しています。
その理由は、BtoB商材の多くが高価格であり、どの顧客(企業)も慎重かつ論理的な意思決定が求められることです。購入する側もビジネスの一環としてやっているので、何の気なしに買うわけにはいきません。一般消費者(BtoC)の商材であれば、購入によって影響を受けるのは購入者当人だけ、あるいはその周辺だけに限られます。そのため、電車の車内の広告で興味を持ち、仕事帰りに購入……という展開も考えられるわけです。
BtoBの場合、購入に至るまで徹底的な情報収集が行われるでしょう。ある商品やその販売元の会社のホームページはもちろん、パンフレットや比較サイト、あるいは商品を購入したことのある企業の知り合いに感想を聞くなど、多種多様な情報を収集することになるでしょう。そのうえで、社内で上席や役員の稟議を経て、購入依頼が総務部のような担当部署に辿り付き、ようやく購入に至ることが多いはずです。
だからこそ、バイヤージャーニーに沿ったコンテンツを適宜提供できるコンテンツマーケティングはBtoBマーケティングと相性がよいということになります。コンテンツマーケティングは、Webサイトを中心に幅広く情報を発信する手法でした。BtoB商材は、見込み客によって幅広く情報収集の対象となりやすいです。そのため、コンテンツマーケティング経由の情報収集も多くなります。フェアで正しい情報をコンスタントに発信していれば、それは見込み客にとって参考になります。稟議で上席の承諾を得る際にも役立つでしょう。
コンテンツ作成の前に読みたい「カスタマージャーニー」解説記事はこちら
効果的なコンテンツマーケティングの事例
コンテンツマーケティングの事例は多いのですが、実際にコンテンツマーケティング開始後の効果を発信している企業はそれほど多くありません。ここでは、数少ない「成功事例」を2点紹介します。
まず、グループウェアやクラウドサービスの開発を手がけるサイボウズによるオウンドメディア「サイボウズ式(リンク:https://cybozushiki.cybozu.co.jp/)」です。サイボウズ式は、サイボウズ社の認知度向上を目的として2012年に開始されました。外部の編集プロダクションに記事作成を依頼しつつも、社内で編集を手がけるなど組織的にコミットしている点が特徴的です。クラウドサービス購入者の4.4%がサイボウズ式経由で認知したということで、売上に少なからずコンテンツマーケティングが貢献していると分かります。
次に、コクヨの「WORKSIGHT(リンク:https://www.worksight.jp/)」です。コクヨ自体はオフィス家具を中心に扱う企業ですが、こちらのオウンドメディアでは働き方をテーマとしています。働く場所から家具を考えているという視点を伝えることが、メディアの一つの目的となっています。担当者によると、通常の営業活動では得られないような案件の創出件数をKPIとして設定しているということです。営業部門にもていねいに説明を行うことで、社内の理解を得られるよう努めている点も示唆的です。
以上の事例から参考になるのは、コンテンツマーケティングが売上に貢献するのは確かであるものの、そのためには読み物として質のよいコンテンツ、読みやすいメディア作りが大前提であるということです。コンテンツマーケティングを始めたいならば、短期的な成果のために自社商品の売り込みありきのコンテンツばかりをアップするべきではありません。
SNSで話題になったり、検索上位に上がったりする質のよいコンテンツが、かなりの時間経過後に案件につながるものです。目的を立てることは必要ですが、それに囚われるとコンテンツマーケティングの真髄を見落とすことにつながります。
おわりに
コンテンツマーケティングは、インターネットと検索の時代に適したマーケティング手法です。その代わり、コンテンツを定期的に生み出し、読みやすいWebサイト(オウンドメディア)を作るためにはノウハウと時間が求められます。コンテンツ作成やメディア運営には、社外のリソースを活用するとともに、社内の体制作りも必要です。
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