マーケティング活動の中で戦略策定をするとき、関係者に方向性やスケジュールなどをしっかり伝えるため、企画書を作成することも多いでしょう。では、社内の上司や経営陣などを説得できるような企画書を作るためには、どうすればいいのでしょうか? この記事では、企画書を作るときにおさえておきたい5つのポイントと、3つの注意点をご紹介します。
目次
企画書と提案書の違い
企画書と提案書。両方ともビジネスシーンでよく使われる言葉ですが、実はこの2つにはいくつかの違いがあり、使用するシチュエーションによっても的確に使い分ける必要があります。まず、企画書と提案書の違いをみていきましょう。
企画書は「問題解決の具体的な方法」を明示するもの
企画書は、主に社内のプレゼンなどで使われます。新たな製品やサービスの開発、販売の許可を得るための書類などが、その代表例です。製品やサービスの提供により、どのような成果が期待できるのか、根拠となるデータなどとともに具体的に説明する内容の文書です。
提案書は「顧客の課題を解決する案」を提示するもの
提案書は、顧客や見込み顧客に対して、課題や問題を解決できるようなアイデアを提案するものです。あくまでも“アイデアの段階” なので、詳細なデータの裏付けよりも、課題や問題を払しょくする仕組みを提案することに重きが置かれます。解決に向けた具体的な戦略については、別に設計したものを用意することが多く、あくまで調査資料などをもとに「問題解決の方向性を提案」することが重要です。
説得できる企画書作成の5つのポイント
受け入れられやすい企画書を作成するには、目的を明確にして、ロジックに沿ったストーリーを展開することが重要です。そこで「ロジックに沿った企画書」を作るためのポイントを5つご紹介します。
1. 客観的な課題抽出・問題提起で、受け手の共感を得る
企画書は、製品・サービスの提供が、最終的に会社の収益向上につながるものであることを、説明・共有・理解してもらうための資料です。そのためには、前提にある課題や問題が「会社にとって取り組むべき価値がある」ことを、社内の受け手に認めてもらう必要があります。
市場データや競合他社データなどを参照して、客観的な視点からも自社が抱えている問題を明示しなければなりません。当然、説明を聞く人の共感を得られるように明示することがポイントになります。
2. 現状分析と問題提起には分析フレームワークを使う
解消すべき課題や問題点を導き出す際に、さまざまな分析フレームワークを活用しましょう。受け手に伝わりやすくなり、企画自体のアピールにも効果的に働きます。
たとえば、市場・顧客・競合・自社の視点から課題を見つけ出す「3C分析」や、内部要因・外部要因から課題を探す「SWOT分析」といった分析のためのフレームワークはとても有効です。これらのフレームワークでは、客観的な事実やデータをベースにして分析を行います。従って、導き出される課題や問題も客観性を持った内容となるので、必然的に説得力を持たせることが可能なのです。
3. 企画のメリットを提示する
自社がどのような課題や問題を抱えているのかを明示したら、次に、その企画によってどのような成果(メリット)が得られるのかを提示します。収益につながることももちろんですが、それ以外にも得られる副次的な成果についても示しましょう。そうすることで、企画を多面的に理解してもらえ、受け手の賛同を得やすくなります。
たとえば、
- 市場シェアを拡大させて知名度を高める
- 自然環境に貢献することで企業のブランドイメージを向上させる
などといったことも、副次的に得られる成果の一例です。
4. 「6W2H」をはっきりさせる
企画書を作る際は、6W2Hを明示することが必要です。
- Who=誰が (実行する人あるいは部署)
- What=何を (届ける価値)
- Whom=誰に (ペルソナ設定したターゲット)
- When=いつ (どのようなタイミングで)
- Where=どこで (想定する市場)
- Why=なぜ (会社の社会的意義を前提にした理由)
- How=どのように (必要となるノウハウあるいは手段)
- How much=いくらで (投入する資金あるいは販売金額など)
ここで意識しておきたいのが、ただ会社の収益を追求するだけでなく、自社や自社の製品・サービスが存在する意義や社会性が求められるということです。市場に受け入れられるためには、何らかの形で市場に貢献することが必要です。さらにそれが、課題や問題解決にもつながることが要求されます。
つまり、想定するターゲットと自社とが双方に求め合う関係性の構築が、最終的に目指すポジションです。企画書でこのポジションを明示できた時、その企画書は価値のあるものと判断されるでしょう。
5. 読みやすさを考慮する
企画書は内容が良ければそれで良い、というものでもありません。企画の是非を判断する受け手が理解しやすいように、読みやすく工夫することも重要です。
企画書の枚数が必要以上に多過ぎたり、1枚のスライドに多くの要素や企画説明資料を盛り込みすぎたりすると、受け手は混乱しやすくなります。重要なポイントが捉えづらく、企画書自体が有益なものであるかどうかについて、判断がしにくくなるのです。
そうならないためにも、一つの企画書で使う色数は最大3色程度に抑えておくと良いでしょう。それより多くの色を意味を持たせずに多用すると、受け手は企画の内容よりも、そのビジュアル要素に意識を取られ、企画自体を理解することが難しくなります。
また、文字の書体については、特別な理由が無ければ、可読性が高い「ゴシック体」にしておくと無難です。さらに、複雑な情報は整理をして、図やグラフなどで視覚的に把握できるように工夫することも大切です。
企画書作成時の3つの注意点
企画書の構成を考えるには、その流れをロジックで組み立てることから入るといいでしょう。逆に、思いつきのアイデアから企画書を構成すると、ロジックから構成したケースと比べ、データによる検証などが幾分面倒になります。結局、企画自体が成立せずに失敗する可能性も少なくありません。
そこで、企画書を作る際の注意点をご紹介します。
1. 企画を通すことにこだわらず、実行可能な戦略を立てる
企画書が通らないことには、せっかく立案したマーケティング戦略も実行に移せません。そのため、企画が通ることだけにこだわって企画書を作ってしまい、企画倒れになるケースはよくあります。
企画書は、あくまで課題・問題をどうやって解決するかを文書化したものです。その内容が非現実的なものだと、たとえ企画書自体は承認されたとしても、期待する結果・成果が得られることは稀でしょう。逆に、ロジックさえしっかり構築されていれば、大抵の企画書は最終的に承認されるといえます。
2. 参考資料に誤りがないよう十分に精査する
企画書は、前述の通りデータによる裏付けを根底としたストーリー展開をする必要があります。ですから、そのベースとなるデータ自体に不備があると、最終的に導き出される結論も正しいものになりません。
3. 事実の解釈に主観を交えない
企画書では、事実→解釈→主張の流れで最終的な結論を導き出します。そのストーリーのロジックに穴があれば、提案する戦略は間違ったものとなってしまうでしょう。特に、事実から解釈に至るロジックの部分で、主観を交えたものにしてしまうと、間違いが生じやすくなります。このような間違いを避けるためには「ロジカルシンキング」の知識を得るなど、正しいロジックの流れを導き出せるスキルを備えておくことも必要です。
おわりに
企画書の目的は、客観的データから導き出した課題・問題を解決するために、製品・サービスを、誰に対して、どのように提案するのかを具体的に説明することです。そうして得られる成果とその根拠を、いかに説得力を持って伝えるかがポイントになります。
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