インサイドセールスは、しばしば「テレアポ」や「テレマーケティング」と混同されることがあります。この記事では、インサイドセールスとテレアポ、テレマーケティングの違いについて解説します。
目次
テレアポとは「アポ獲得」が主目的
テレアポとはテレフォンアポインターの略で、ターゲットに電話をかけ、訪問して商品やサービスを紹介するために「アポイントを獲得する」ことが目的です。
多くの場合、テレアポの評価対象は「アポイントの件数」です。したがって、たとえターゲットが商品の魅力やサービス導入のメリットを十分に感じていなかったとしても、それらを伝えるきっかけとなるアポイントさえ獲得できればそれで良いということになります。
テレアポをした本人が直接訪問することもあれば、別の営業担当者が訪問することもありますが、実際に顧客の温度感やニーズを知るのは、多くの場合は訪問後となります。そのため初回訪問では、時に的外れな資料を持参してしまったり、訪問相手にとって不要な情報を提供してしまったりすることも起こり得ます。
テレマーケティングとは「顧客情報やニーズのヒアリング」が主目的
テレマーケティングとは、電話を使ったマーケティング手法のことです。電話による「ヒアリング調査」などに代表されるような、顧客情報やニーズを聞き出すことが主な目的です。
テレマーケティングはアメリカではじまり、日本国内では1980年代ころからBtoCビジネスで取り入れられ始め、やがてBtoBビジネス領域にも広がりました。
一般的には、トークスクリプトを用いて「イエス/ノー」で回答できる定型的なやりとりを繰り返しながら、情報を伝えつつ相手に質問をしていきます。たとえアポイントに繋がらなかったとしても、のちのマーケティング活動に生かせる情報を顧客から聴取することが目的です。
インサイドセールスは「顧客ニーズの把握」や「関係構築」も実施
インサイドセールスとは、電話やメール、チャット等のデジタルツールを用いた「非対面営業(内勤営業)」のことです。用意された架電リストに対し、プッシュ型のアウトバウンドで電話をかける点はテレアポやテレマーケティングと同じですが、その最終目的は大幅に異なります。
インサイドセールスでは、ターゲットに商品の魅力やサービス導入のメリットを説明するだけでなく、ターゲットからヒアリングした情報を蓄積し、相手との「関係構築」や「案件創出」をすることが目的なのです。そのため、フィールドセールス(訪問営業)が顧客と対面する前には、ニーズや予算といったBANT情報(※)など、比較的深い部分まで把握しています。
※BANT(バント)情報について、詳しくはこちらの記事をお読みください。
インサイドセールス導入の4ステップ|②セールスモデルの策定
インサイドセールスとテレアポ/テレマーケティングの大きな違い
「テレアポ」「テレマーケティング」「インサイドセールス」は、いずれも電話を使用してターゲットとコミュニケーションを取る点では同じですが、インサイドセールスは他の2つの手法と大きく異なる点があります。
それは、一度架電したらそれで終わりではなく、定期的な架電やメルマガ配信等のデジタルツールなどを活用し、ターゲットが求める情報を提供し続ける点です。初回の架電でヒアリングした情報や、Webサイトの訪問履歴、メルマガの開封履歴情報などをもとに、時間をかけて顧客の温度感を高めていくのです。
また、インサイドセールスはフィールドセールス(訪問営業)と営業プロセスを分業して初めて成り立つという点でも、他の手法とは大きく異なります。インサイドセールスの目的は、先に述べたように、見込み顧客を育成して関係性を構築し、顧客の温度感が高まった時点でフィールドセールス(訪問営業)にバトンタッチすることです。
つまりインサイドセールスだけでなく、フィールドセールス(訪問営業)と対になって営業効率をアップさせるという点で、他の手法とは仕組み自体が異なるのです。
インサイドセールスが注目される2つの理由
テレアポ/テレマーケティングに比べて歴史が浅いインサイドセールスですが、近年ではインサイドセールスが注目されるようになりました。その背景にはどういった理由があるのか探ってみましょう。
従来の「分業」の限界
従来、営業プロセスの分業というと、マーケティング部門がテレマーケティングによってリードを獲得・育成し、営業部門にバトンタッチする流れで進められていました。しかしその流れの中で、営業部門では「マーケティング部門から引き継がれるリードの質が低い」という声が、マーケティング部門では「営業部門にリードを引き継いでも、その後のフォローが不明瞭」という声が目立つようになってきました。
このような懸念の声が出る理由には、営業プロセスの4段階である
- リード発掘
- 関係構築
- 商談醸成
- クローズ
のうち、2の関係構築のプロセスが抜けてしまっていることが考えられます。営業部門は日々足元の数字に追われて、3や4の活動に多くの時間を割いています。そのため、どうしても2の部分が薄くなりがちです。この薄くなりがちな部分を担当する部門として、今インサイドセールスが注目されているのです。
- テレマーケティングを実施しても、“関係構築”のプロセスに手が回らず、機会損失を招いている
- 確度の低いリードに時間をかけてしまっており、営業効率が悪い
このような課題を解決する方法として、見込み顧客との関係を深めて営業部門にバトンタッチし、また営業部門が取りこぼしてしまっているリードを拾う役割を担うインサイドセールスが、ますます重要になっているのです。
繁忙期・閑散期などに合わせてフィールドセールスの活動を上手にコントロールできる
インサイドセールスが注目されるもう一つの理由に「フィールドセールス(訪問営業)の稼働状況をコントロールできる」という側面があります。
例えばフィールドセールスが最も忙しい決算期に「半年後にサービスの導入を検討している」顧客を渡されても、すぐに売上に繋げることはできません。そのような場合、インサイドセールス担当が案件を引き取り、さらに顧客の育成を続けて、その後の売上に繋げることができます。
一方で、閑散期などフィールドセールスの訪問先が枯渇している状態のときは「予算についてはまだヒアリングできていない・BANT情報にまだ不足がある」状態の顧客も、フィールドセールスへすぐに渡してしまうという判断も可能です。
このように、インサイドセールスからフィールドセールスに渡す見込み顧客の条件や基準を臨機応変に変えることができます。フィールドセールスの稼働状況に応じて、インサイドセールスが“蛇口”となってフィールドセールスの活動をコントロールできるのも、大きな魅力といえるでしょう。
おわりに
「テレアポ」「テレマーケティング」「インサイドセールス」はそれぞれに果たすべき役割があり、どの手法が優れているということはありません。しかしながら、インサイドセールス導入を検討する際に、他の2つの手法と混同され、社内で反対にあってしまうケースも少なくありません。それぞれの役割をきちんと認識した上で、自社に最も適した手法を選びましょう。
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