顧客の購買行動が多様化している現在、企業は旧来の営業スタイルを大きく改める必要性に迫られている。もちろん、日本企業が営業改革に着手してこなかったわけではないが、最後は営業担当者の「売上責任」に頼っていたのが実情だ。しかし、もはやその手法では顧客の要求をカバーしきれなくなっている。代わって、グローバルでは新常識となっている「レベニュープロセス」の概念とは。概要や実現により得られる効果について、日経クロストレンド発行人・佐藤 央明が聞いた。
目次
現在の顧客の購買行動を、1人の営業担当者がカバーするのは不可能
佐藤:市場のニーズが「モノ」から「コト」へシフトする中、従来型の営業・販売プロセスでは継続的な収益増を図りにくくなっています。このような、現在の企業ビジネスを取り巻く状況と既存の営業モデルの課題について、どう見ていますか。
プロセス・テクノロジー事業統括本部
コンサルティング本部長
兼 事業戦略室室長
北村 寿雄
北村:The Model※が提唱された2019年ごろから、売り上げを伸ばすためにマーケティングやインサイドセールス、カスタマーサクセスに取り組む企業が増えていると感じます。サブスクリプション型ビジネスの増加に伴い、顧客と長く良好な関係性を築かなければ売り上げを伸ばせなくなっていることも、その背景にあるでしょう。
ただ問題もあります。マーケティングやインサイドセールス、カスタマーサクセスなどのプロセスは本来、互いに連携するべきものですが、従来の縦割り組織のまま進めている企業が少なくないのです。システムや顧客データが分断されているため、スムーズな連携が取れず、結果的に顧客体験の低下を招いているケースが多くあります。
尾花:日本企業の営業スタイルは、長く“先発完投型”が主流でした。「担当顧客については提案からクロージング、アフターフォローまですべて自分でやる」という売上責任を重視したもので、完遂できて初めて一人前と評価されます。
しかし、顧客の購買行動が多様化する中で、この先発完投が不可能になっています。例えば、インターネットで情報を収集したい顧客のために、営業が自らWebサイトを立ち上げるでしょうか。やれる人は少ないし、仮にやれたとしても非効率です。そこで各プロセスを分離させていったのですが、北村が述べたようにプロセス間が連携できていない。
プロセス・テクノロジー事業統括本部長
兼 事業企画本部長
尾花 淳
また、先発完投型の延長で、分業の各所に営業担当者が絡むケースもありますが、専門外の領域では十分な働きができません。これで売上を高めることは難しいでしょう。
佐藤:日本企業は伝統的に営業が強く、特に高度成長期には根性論や成果主義で成功してきた印象があります。しかし、だからこそそれを捨てきれないのでしょうか。
尾花:そうした面もあると思います。例えば、自分の担当顧客が自社のWebフォームや代表電話に問い合わせをしてきた場合、その担当者は上長に「お客様をしっかりフォローしていたのか」と叱られるでしょう。感覚的にご理解いただける方は多いはずです。
ただ、より俯瞰的に見れば、組織の売り上げをつくることが営業活動の目的であり、本質的にはどのチャネルに問い合わせが来てもよいはずです。大事なのは、あらゆる局面で一貫して質の高い顧客対応ができること。これを実現するプロセス分業の在り方は「レベニュープロセス」と呼ばれ、欧米では一般的になっています。
※BtoB営業プロセスのフレームワーク。オラクル、セールスフォースなどで活動した福田 康隆氏が著書『The Model』で提唱した
営業の新たな常識となる「レベニュープロセス」
日経クロストレンド発行人
佐藤 央明氏
佐藤:レベニュープロセスについて、もう少し詳しく教えてください。
北村:顧客の購買行動に沿った組織の連携プレーを実行し、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めるための在るべき姿がレベニュープロセスです。
一般的には、見込み顧客を発掘する「リードジェネレーション」、見込み顧客を商談につなげる「リードナーチャリング」、案件成約まで漕ぎ付ける「クロージング」、顧客の成功を支援して定着化を図り、取引を継続・拡大していく「カスタマーサクセス」という4つのプロセスで構成されています。
尾花:付け加えると、購買行動開始前の段階もレベニュープロセスに含むことがあります。顧客に商品・サービスの存在を認知させたり、興味を喚起したりする。あるいは、それがないことで発生する課題を認識させることで、購買行動を促すプロセスです。
佐藤:確かに、これだけ多岐にわたると先発完投型ではカバーしきれませんね。
尾花:もちろん、必ず全プロセスを構築しなければいけないわけではありません。例えば、マスメディアの情報発信を利用することで、デマンドジェネレーションにはほぼ手をかけずに済んでいる企業や商品もあります。ただ、いずれにせよ単に「売る」だけではないことがレベニュープロセスのポイントです。
また、レベニュープロセス全体をサイクル化して、顧客との関係性を強化していくことも大切です。商談をクロージングしたら2周目でアップセルを提案し、3周目でクロスセルを提案、4周目では別の顧客を紹介していただく。このような形で継続的に売上増を図っていくのが理想です。
佐藤:それら一連のプロセスを支えるデジタルテクノロジーには、どのようなものがあるのでしょうか。
北村:マーケティングやインサイドセールス、営業、カスタマーサクセスなど、レベニュープロセスを支えるすべての組織が顧客フロント業務を遂行する上で使うテクノロジーはレベニューテックと呼ばれています。
このレベニューテックにはSFA/CRM、MA(マーケティングオートメーション)、CDP(顧客データ基盤)やBIなどの様々なシステムが含まれます。必要になるレベニューテックの集合(レベニューテックスタック)は各社各様ですが、前提となるのは「あらゆるチャネルで収集した顧客データを統合し、組織横断型で活用する」ということです。それにより、一貫した顧客対応が実現できるようになります。
最適なプロセスの設計、環境構築から人材育成までを支援
佐藤:先発完投型の営業スタイルからレベニュープロセスへの転換を支援するために、ブリッジインターナショナルが提供している価値とはどのようなものでしょうか。
北村:レベニュープロセスを考える際に陥りがちなのが、「各プロセスでどんなツールを導入するか」が目的になって、売り上げやビジネス成果が二の次になってしまうことです。その点当社は、「お客様が売上最大化を目指すためにはどのようなプロセスが必要か」から考えて、必要なプロセスやアプリ群を設計・提案することが可能です。
尾花:なお、先発完投型が必ず悪だというわけではありません。テクノロジーを使って営業担当者が完遂できるのであればやればいいし、専任部門と協力あるいは分業したほうが効率的ならそうすべきです。お客様ごとの状況に合った、最適な提案ができるのは当社ならではの強みです。
これが可能なのは、2002年の設立以来、20年以上にわたってBtoBインサイドセールスのアウトソーシング事業を営んでいることが大きいと思います。お客様と深く関わり、共に苦労しながら営業活動の課題解決を目指してきました。ときにはインサイドセールスの枠を超えて、マーケティング部署と共同でリードナーチャリングを進めたり、カスタマーサクセスを手掛けたりするケースもありました。また、CDPを構築してCRMやAIと連携するといったシステム面の取り組みにも豊富な経験を持っています。このように、実務の現場で培った幅広いレベニュープロセスのノウハウが、当社のサービスに還元されています。
佐藤:レベニュープロセスを実現した国内企業の事例があれば教えてください。
北村:クラウド型会計ソフトで知られる弥生様の例があります。グローバル標準のレベニュープロセスをモデルにして、必要なテクノロジーの選定や最適なアプリケーションアーキテクチャーの策定を支援しました。戦略的データ統合プラットフォームを構築することで「データの信頼性と一貫性の向上」「必要なデータの迅速かつ容易な入手」「データに基づく意思決定の高度化」「組織全体の業務効率化」を実現しようとしています。
また、その先に見据えるのは、デマンドジェネレーションからマーケティング、営業、カスタマーサクセスに至る一貫したCX(顧客体験価値)の向上です。それに向けたレベニュープロセスの拡充についても継続的にお手伝いしていく考えです。
佐藤:人材不足などを背景に、旧態依然のスタイル維持は難しくなっていると思います。組織で売上をつくる体制へのシフトが必須であり、そのイネーブラーとして、レベニュープロセスの確立とレベニューテックスタックの構築が必要なことが分かりました。本日はありがとうございました。
※本コラムは日経BPの許可により「日経クロストレンドSpecial 2024年7月9日」に掲載された広告を抜粋したものです。禁無断転載。
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