本コラムはデジタルインサイドセールスのサービス提供に向けて
AI(人工知能)に関して試行錯誤をコラム化したものです。
今日では毎日のように新聞でも「AI」という言葉を見かけるようになり、あらゆる業界やあらゆる業務プロセスでAIの活用が検討されるようになってきました。
その言葉を見かけない日は無いといった感じでしょうか。
私どもブリッジインターナショナルが、営業現場でAIを利用できないものだろうか?と考え始めたのは、2年ほど前にさかのぼります。
今日は、その際にどのように考え、どのようなところにたどり着いたのか、お話してみたいと思います。
CRMにはいろんなデータがたまっているはず!?
ちょうどMachine Learning(機械学習)という言葉をよく目にするようになっていた頃でした。
機械学習? AI?
言っていることはわかるけど、そんなの“夢物語”だよね。
そんな風に思っていました。
「最近話題のMachine Learningにかければ、どこに何が売れそうかわかるんじゃない?」
何気ない誰かの一言から取り組みは始まります。あなたの会社でもそのような声がそこかしこで聞こえてきたりするものではないでしょうか。
マイクロソフトのAzure環境では、少しの費用を払えばMachine Learningが使えるようになっていました。
そしてそのユーザーインタフェースは非常に簡単そうに見えます。「処理」を定義する“箱”をドラッグ&ドロップでつなぎあわせれば、自動的に分析を進めてくれるのです。
よし、ではやってみよう。
私たちの手元にあるデータと言えば・・・
- 顧客基本情報・属性:所在地、業種、従業員数規模、売上規模、・・・
- 案件(商談)情報:対象商品、数量、金額、売上予定時期、・・・
- 販売履歴情報:対象商品、数量、金額、販売日、・・・
- 活動情報:日付、活動手段、相手のご担当者(属性含む)、活動内容、結果、・・・
そうです、まさにCRMに入っている情報です。インサイドセールスの現場では、CRMデータベースを中心に業務が回ります。インサイドセールスの担当者は、CRMでコール先のお客様の情報(ときにはこれまでのそのお客様との関係の情報も)を確認し、順に電話をかけていきます。電話で会話した結果を活動情報として登録し、その活動の結果として案件が生まれればその情報も登録します。あるいは、すでに案件の情報がある場合にはそれらの情報を更新していきます。こうやって、インサイドセールスが活動するとCRMには多くの情報が登録されていき、また最新の情報に更新されていくのです。
少し話が変わりますが、「インサイドセールス」に取り組むメリットの一つはここにあります。インサイドセールスは通常、机に向かって業務をしますので、常にそこにはパソコンがあり、いつでもCRMデータベースを参照でき、情報を更新できる状態になっています。また、そこまで含めてインサイドセールスの仕事(且つ、きちんと入力しないと自分自身のKPI実績をカウントしてもらえない)なので、面倒だから入力しないということはあまり考えられず、基本的にはきちんとデータがたまっていきます。
さて、データは揃いました。
どのお客様にどういう活動を行い、その結果としてどういう案件が生まれ、(商談プロセスが)進み、結果としていつ、どうなったのか。そして、何が、いつ、どれだけ売れたのか。
これだけの情報があれば、きっと、どういうお客様にどういう活動を行えば、何をどのくらい買ってくれそうか、わかりそうな気がしてきませんか。
データをMachine Learningで処理してみる
さて、いよいよデータを処理してみます。
ここでまず困ったのは、どのデータ(項目、カラム)を使うかということでした。
インサイドセールスでは、お客様に電話をかけた際にいろいろな情報を聞きだし、それらの情報をすべてCRMに入力していきます。そうすることにより、そうした情報を条件として、対象顧客の絞込み(ターゲティング)ができるようになるからです。これらの情報は「顧客プロファイル」や「顧客カルテ」と呼ばれたりします。
それらの情報には以下のようなものがあります。
- 拠点数(営業拠点、海外拠点、事業所数、・・・)
- 各役割の従業員数(営業要員数、総務部門の人数、開発者数、有資格者数、・・・)
- 導入数(PC台数、サーバー台数、システム導入数、社有車数、・・・)
※インサイドセールスの“売り物”によって聞く内容は異なります。
さて、こうした情報が毎日のようにたまってくるのですが、Machine Learningによる分析において、果たしてどの情報を利用すれば良いのか。これを考えるのが難しいわけです。
データの分析を行う担当が、自分の直感でこのデータとこのデータは関係がありそうだと思い付いたら、それらのデータの相関関係を見ていきます。
たとえば、こうです。
「現在使っているシステムがA社製のもので、導入した年が5年以上前となっている企業は、自社の製品に買い換える可能性が高い。」
もしもそれが正しいのであれば、既存システムのメーカー名(ここではA社)や既存システムの導入年(ここでは2012年以前)という情報と、自社製品の購入との間に何か関連性がある可能性が高いということになるわけです。
その“仮説”を信じてデータの相関関係を見てみると、なんだかそれほど関係がありそうになかったりします。
がっかりして、また先ほどの仮説に戻り、どの情報とどの情報に関連がありそうかを再検討することになるのです。
これを何度も何度も繰り返していくことになります。それは非常に長い長い道のりなのです。
結局、私たちは適切な“勝ちパターン”を見つけることができませんでした。
そして気づいたのです。
- データの項目が多ければ多いほど良いというわけではない。
- データに偏りがあると分析は困難である。
- “正解”が不明瞭なデータの分析は困難である。
そうして私たちの初めての試みは終わっていきました。
まとめ:得られたこと
私たちの初めての試みは悲しい結果に終わりました。
CRMには、データは確かにたまっています。そして私たちはいろんなことをお客様から聞き出そうとして、たくさんの項目を用意します。しかしながら、それらのデータは本当にそのまま使えるデータなのでしょうか。
- 分析においてはあらゆる項目のデータを使ってみようと考えずに、なるべく基本的で、多くのお客様から取得できている情報からはじめましょう。
- ある項目のデータにおいて、一定数以上のレコードで同一の値を持つような場合には分析に値しません。「やっぱりそうだね。」となるだけです。そうした情報は分析の対象からはずしましょう。
- ○×△のように明確な違いがあるデータを用意しましょう。そうしたデータを用意することで“勝ちパターン”は見つけやすくなるはずです。
これが私たちが学んだことです。こうして私たちは次のステップへと進んでいきました。
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