未だ新型コロナウイルスの渦中にある日本、以前のような訪問営業はままならず、営業活動に手を拱いている企業も少なくありません。そのような異常事態に対応すべく、「訪問しない営業」であるインサイドセールスを内製しようと考えている、もしくはすでに導入を決定している企業も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するのはインサイドセールスを新たに発起する際、必ず作成しなければならない「トークスクリプト」の作成方法とその重要性についてです。
インサイドセールスの内製を成功させるために欠かせないトークスクリプトは、インサイドセールスの肝と言っても過言ではありません。
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コンサルタントが語る!インサイドセールスにおけるトークスクリプトとロープレの重要性
目次
トークスクリプトの必要性
トークスクリプトとは会話の地図または設計図と呼ばれるものです。このコールで「何を伝えて」「何を聞いて」「どこにもっていくのか」という会話の3要素を明確にし、トークスクリプトに盛り込むことが重要となってきます。この3要素を組み込んだトークスクリプトがあれば、会話の行き詰まりやヒアリング漏れなどを防ぎ、コールの品質を高めていくことができ、逆にこの3要素が入っていないトークスクリプトは意味をなさなくなってしまいます。
優れたトークスクリプトは営業パフォーマンスを向上させる
クオリティの高いトークスクリプトはそれを活用するだけで、営業パーソンのパフォーマンスレベルを向上させることが可能になります。
なぜなら、トークスクリプトはインサイドセールスがコールを行う上でのナレッジとなり、営業活動における武器となるからです。何を言えばいいのか、何を聞き出せばいいのか、どうやって話を進めたらよいのかが明確に記載されているので、経験の浅いインサイドセールスでも、悩まずにスラスラと受け答えができます。
つまり、経験の浅い新人や電話でのコミュニケーションが苦手な人、もしくは自社商品についての知識が足りない人でも、トークスクリプトをもとにベテランに近いパフォーマンスを発揮できるというわけです。
トークスクリプト作成の手順
トークスクリプトは「コールフロー=会話の骨組み」と「シナリオ=会話の中身」このふたつの組み合わせによって完成します。
トークスクリプトはKPI(達成すべき目標値)に対応して作るものであり、「こういう会話をしたらKPIのここに働きかけて数字を出していけるだろう」と予測を立てながら作成するものです。ですから、KPIができたらそれをトークスクリプトに反映させる必要があります。
それでは、KPI達成に向けたトークスクリプト作成の手順を詳しくみていきましょう。
STEP1.会話の構成と目的を明確にする
まずは、会話の構成とその目的を明確にする必要があります。会話の構成を考え、会話の構成内容を組み込み、その構成内容に沿った目的を付け足し、それによって引き出されるゴール(活動結果)を明確にするのです。
会話の構成内容を簡略化すると、取次(名乗り・取次依頼)→フロント(名乗り・趣旨説明)→メイン(案内詳細)→クロージング(パーミッション・個人情報取得)となります。
会話の構成要素としては以下の通りです。
・概要説明(なぜコールをしたのか)
・現状確認(コールをした企業の現状を確認する)
・課題確認(企業の抱えている問題を確認する)
・価値訴求(課題に対しての解決法を提案する)
・興味確認(提案に対しての興味の有無を確認する)
・案件確認(案件に発展しそうかどうかを確認する)
そして会話にはそれぞれ目的を設定します。
<取次>
実施内容:代表受付を突破し、キー部署を開拓する
目的:顧客との信頼関係を築く
<フロント>
実施内容:キーマンとの繋がりを持ち、会話の土台づくりを行う
目的:顧客からの情報を引き出し、硬度の高い案件作成を行う
<メイン>
実施内容:顧客の状況を把握し、課題・興味の喚起共有を行うと共に案件を発掘・醸成する
目的:成約率の高い商談の提供・売上貢献
活動結果:プロファイル獲得・案件獲得・訪問獲得
<クロージング>
実施内容:継続営業を許諾し、連絡先情報を確認する
目的:コールの案件化
活動結果:パーミッションの獲得・会話成立
このように第一ステップはトークスクリプト作成の基本となる会話の構成、そして構成内容と共にその会話を行う目的を考えるところから始まります。
STEP2.コールフロー(会話の骨組み)を作成する
コールフローはSTEP1で考えた会話の構成をより具体的に作りこみます。
会話の流れを視覚化したものがコールフローとなります。会話の流れは1本道ではありません。流れの中に必ず分岐点が存在します。例えば興味の有無や課題の有無といったYES・NOの分岐点があるのです。ですから、コールフローにも興味があるならこちら、ないならこちらというように分岐点をつくり、インサイドセールスが会話に詰まることのないようにしなければなりません。
STEP3.シナリオ(会話の内容)を作成する
シナリオはSTEP2で作成したコールフローに沿って作成していきます。「何を言われたらどう返すか」といった内容を事細かに考えて行く必要があるので、非常に想像力のいる作業といえるでしょう。
また、シナリオは実際のコールで読み上げられるように口語体で作成することが重要です。箇条書きやワードだけのシナリオでは意味がわからず飛ばしてしまったり、言葉に詰まったりしてしまう恐れがあります。
<例:代表受付への取次依頼コール>
いつも大変お世話になっております。○○株式会社の○○と申します。お忙しいところ誠に恐縮ですが、○○部門の○○をされていらっしゃるご担当者さまにお取り次ぎ願えないでしょうか。
コールフローに合わせて、上記のような口語体でシナリオを作成していきます。
トークスクリプト作成において一番重要視されるのはこの「シナリオ作成」作業です。きちんと中身の詰まったシナリオが作り込めていれば、経験の浅い新人さんでも会話に迷うことなく、コール業務を遂行できます。
STEP4.トークスクリプトの完成
コールフローとシナリオを組み合わせたものがトークスクリプトの完成形となります。言うべきこと聞くべきことが網羅されており、再現性が高く、成功確率の高い会話をパターン化したものが完成されたトークスクリプトです。
ベストプラティクスなトークスクリプトとは、途切れのない効率的な流れを示してあり、その流れに沿った抜けのない会話構成が組まれていること、そして案件の有無を可視化でき、案件の受注確度を高めるヒアリングができるような内容になっていることです。
インサイドセールスとしてそれなりのスキルを持っている人が使用しても、想定しているKPIに繋がらないという場合はトークスクリプトに問題があるといえます。逆に、顧客の課題を引き出し、自社の商品やサービスとマッチングさせ、課題解決の提案ができるものは良いトークスクリプトといえるでしょう。
見込み客を選別するトークスクリプト
インサイドセールスはマーケティング部門などが抽出した顧客のターゲットリストをもとにコール業務を行なっていきますが、トークスクリプトがなくコールを行うとリストの消化に終始してしまったり、個人のスキルに頼る属人的な営業になり成果にばらつきが出たりしてしまいます。
インサイドセールスの役割はリストを消化するのではなく、顧客の状況や課題を把握し、成約できるかどうかの判断をすること。そしてその判断材料を引き出すのがトークスクリプトです。トークスクリプトを用いることによって、顧客が今どの時点にいるのかを正確に把握することができます。
担当者まで繋げ興味喚起できているのか、課題を引き出せているのか、興味はあるが訴求しきれていない状態なのかなど、各企業についての詳細状況を把握し、その情報を蓄積することで成約まで見込みのある顧客とない顧客とを選別することができるのです。
モニタリングでトークスクリプトをブラッシュアップ
マネジメント手法の中に「PDCAサイクル」というものがありますが、トークスクリプトもまたPDCAサイクルのように回していき、ブラッシュアップしていく必要があります。
トークスクリプトに基づいたコール業務を行う上で必要となってくるのが、モニタリングによるアウトプットです。パフォーマンスの低下やその原因、改善策に繋がる情報はすべてコールログ(音声ログ・テキストログ)の中にあります。コールログをモニタリングし原因事象の把握や課題の特定などをアウトプットすることにより、問題点へ素早く対応することができます。
モニタリングでアウトプットされた問題点を現行のトークスクリプトと擦り合わせ、トークスクリプトの内容に抜けがあるのではないか、流れが悪いのではないか、とブラッシュアップを重ねることによってトークスクリプトはより精度の高いものへとなっていくのです。
おわりに
トークスクリプトはインサイドセールスの根幹であるコール業務において、なくてはならないものです。どれだけ精度の高いトークスクリプトを作成できるかどうかによって、インサイドセールスに求められるKPIの達成水準も変わってくることでしょう。インサイドセールス部門を自社で内製することを考えるのであれば、土台のひとつとなるトークスクリプトの作成に注力することをおすすめします。
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