自社のインサイドセールス導入を成功へ導くには、インサイドセールスをスキルの高い「営業」に育てることが大きなポイントの一つといえます。
日本国内が新型コロナウイルスに脅かされている今、従来のように顧客の元に足繁く通うといった営業活動(フィールドセールス:訪問営業)が難しくなっています。その打開策としてもっとも適しているのがインサイドセールスの導入です。インサイドセールスは「訪問せずにホットリード(受注確度の高い顧客)を量産していく営業」。
「訪問せずに営業活動を行う」と言葉にするのは簡単ですが、非対面であるがゆえにインサイドセールスには一人ひとりのスキルとテクニックが要求されます。
そこで重要になるのが、各企業の営業方針に適したインサイドセールスを育成することです。今回は、顧客に的確にアプローチができるインサイドセールスをどう育成したらよいかについてご紹介します。
<参考記事>
インサイドセールスを成功に導くマネジメント手法と上司の役割
目次
営業としてのレベルアップも図れるインサイドセールス
インサイドセールスへの教育は、一営業パーソンとしてのスキルを高めることにも繋がります。
それは、インサイドセールスは相手の表情や感情を読み取りにくい「非対面」で自社の商品・サービスの紹介をし、顧客の関心度を高め、ホットリードへと醸成していくといった、非常にクオリティの高いパフォーマンスを行う営業パーソンであるからです。
つまり、インサイドセールスとしての営業力を高めれば、営業パーソンとしての素地を築くことに繋がり、ひいてはフィールドセールスとしても活躍できる一流の営業パーソンを育てることにも繋がるのです。
インサイドセールスの役割
インサイドセールスの役割は、ターゲットの顧客リストにアプローチをし、関係構築、案件発掘、案件醸成、そして見積りや提案ができるホットな顧客をフィールドセールスに引き渡していくことです。
ホットリードを引き継いだフィールドセールスは確度の高い案件に集中してアプローチできるので、受注確度の高い営業活動が実現できます。
<セールスプロセス>
・「見込み発見・関係構築」「案件発掘・醸成」←インサイドセールス
・「見積・提案」「受注・納品」←フィールドセールス
つまり、インサイドセールスを導入すると結果として営業活動全体の生産性が高くなるということ。これがインサイドセールスとフィールドセールスの分業モデルを用いる醍醐味と言えるでしょう。
インサイドセールスとフィールドセールスが、上手く連携し情報共有することによって、より受注につながる顧客アプローチが可能となるのです。
成果をもたらす良いプロセス作り
案件引き渡しまでのプロセスは、KPI(目標)を用いて管理していきます。全体のプロセスを、「カバレッジ(ターゲットリストを網羅する発信数)が効いた活動」と「成約確率を高める企業固有の特性(各企業の持つ商品やサービスの特徴)を組み込んだ活動」とに分け、それぞれのステージでの達成状態を測るためにKPIを指標として用いるのです。
<カバレッジが効いた活動>
・発信
<企業固有の特性を組み込んだ活動>
・会話成功
・案件発掘
・案件引渡
これらのKPIを達成するには、インサイドセールスが組織的かつ効率的に活動できるようマネジメントすることが求められます。
<参考記事>
インサイドセールスの組織づくりのポイントと担当者に必要なスキル
インサイドセールスの教育
優れたインサイドセールスを育成するためには、「情報を共有する」ことがいかに重要なのかを共通認識として定着させる必要があります。
従来の営業スタイルでは一人の営業パーソンがアポを取り、成約まで結びつけるといった極めて属人的な営業手法でした。しかし、個人の能力だけに依存するスタイルでは有能なインサイドセールスは育ちません。
顧客情報や営業パフォーマンスの仕方、それによる顧客の温度感などあらゆる情報を共有し蓄積していくことで、効率のいい営業活動が行えるだけでなく一個人としての営業スキルの向上に繋がっていくのです。
高いパフォーマンスを生む「ナレッジ」と「経験」
インサイドセールス全員がナレッジと経験をバランスよく持ち合わせることができれば、部門全体の営業パフォーマンスが高くなります。
しかし、チームは新人からベテランまでさまざまな成熟レベルの人で構成されます。このようなチームでは、成果にばらつきが出るため「安定的なKPI達成」の見通しがたちづらいといえます。そこで、マネージャーは、成功事例などの有益なナレッジをメンバー全員に展開し、チーム内の活動の質をできるだけ平準化にすることでKPIの達成に導く必要があるのです。
そこで重要とされるのがナレッジの共有です。ここでいうナレッジとは会話のノウハウやコツ、成功の秘訣、商材に対する深い知識などのことを指します。話のもっていき方や商材のアピール方法、「上手い言い回しだな真似してみよう」というような些細なものまでをチーム内で共有していくのです。また、共有の仕方は口伝ではなく、チーム全体に行き渡るよう体系的なデータを作成することをおすすめします。
必要なのはチーム全体の底上げと平常化
経験を積むにはどうしても歳月を要しますが、ナレッジは短期間で身につけることが可能です。パフォーマンスの成果が出ていないメンバーがナレッジを手にすることにより、足りない経験を補完して、ベテランに並ぶ戦力を確保できるようになります。
ナレッジを手にし、チームの過半数が戦力になると、マネージャーの期待するKPIの達成が現実的なものになってきます。メンバーの経験任せにする消極的なマネジメントではなく、ナレッジを供給し意図的に育成していく積極的なスタンスがインサイドセールスのマネジメントには求められるのです。
チーム全体のナレッジが低い場合の対応策
コール業務のトライ&エラー情報を共有し合って、チーム全体の経験値を高めていく必要があります。
また、ナレッジをさらに強固にするために、営業部門やマーケティング部門からも情報を集めるのもひとつの手です。社内での商品研修やセールストーク術、あるいは訪問営業に同行して営業の現場でどのような会話がなされているのかを学ぶこともナレッジを高めるアプローチといえます。
このようにインサイドセールスチームだけで解決しようとするのではなく、社内のありとあらゆる部門に協力を仰ぐこともナレッジを高める方法です。
スキルギャップを埋めるOFF-JTとOJT
まずはOFF-JTでの研修に長く時間を割き、インサイドセールスのあるべき活動をしっかりと見せる必要があります。単に理屈だけを詰め込むのではなく、例えば会話量を見せたり、成功例を見せたり、理想とするインサイドセールスの姿をしっかりとイメージできるところまでもっていくことが重要です。
しかし、OFF-JTでしっかりと研修を行っても「頭ではわかっていても、言葉に上手く出せない」「体がついてこない」といったインプットとアウトプットのタイムラグが発生することがあります。よって次のステップでは、OJTで顧客へのコールを実践し、実業務をするなかで教育やサポートしていきます。
OFF-JTではスクリプトの説明やロープレが、OJTでは実際の営業活動を見たモニタリングへのフィードバックが経験値として蓄積されていくでしょう。しばらくはOFF-JTとOJTを繰り返しながら、定期的に座学や営業トレーニングを入れていく方法がインサイドセールスを育成する初期の要となります。
これまでの会話のログをもとに、モニタリングしながら「こうゆうやり方だったらこう上手くいっていただろう」というようなことを検証しフィードバックを行い、ロープレをすること。あるいは側から見て足りない知識がネックになっていると感じた場合は、知識強化のトレーニングを行う。こういった実践のモニタリングや知識強化トレーニングなどを随時、実施していくことで次第にスキルギャップが小さくなっていき、マネージャーが期待する水準の活動ができるようになっていくのです。
ただし、注意しなければいけないのが、一足飛びにやるのではなく階段を一段ずつ上がるように着実に成長させてあげる、成功体験を積ませてあげるということ。マネージャーが思う以上に、現場で実践を行っているインサイドセールスは焦りを感じ、その焦りは営業パフォーマンスを下げる結果に繋がります。良い環境でインサイドセールスを育てるためには、焦らず、プレッシャーをかけすぎない指導が必要となってくることを肝に銘じておきましょう。
おわりに
即戦力になるインサイドセールスを育てるために大切なのは、営業パフォーマンスを行う上で必要となるナレッジという武器をいかに蓄積させていくかです。そのためにも有効的な情報の共有は必然事項であり、会社全体の協力が必要となってきます。
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