インサイドセールスを成功に導くマネジメント手法と上司の役割

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インサイドセールスのPDCAサイクル

「インサイドセールスの導入」を成功させるには、どのようなことに留意すればよいでしょうか。私たちは長年に渡るインサイドセールスの運用経験から、「ツール」「スキル」「PDCA」の三大要素をうまく活用・運用することが成功への近道だと考えています。

具体的には、MAやCRMなどの「ツール」の導入、インサイドセールスとお客様との会話における「スキル」の向上、そして組織として課題を改善していくマネジメントサイクル「PDCA」の体系化です。

今回はこの三大要素のうち「PDCA」を取り上げ、インサイドセールスのマネジメント手法として「PDCA」の具体的な実行例をいくつかご紹介します。また、インサイドセールスのマネージャーが、上司としてどのような役割を果たすべきかについても具体的に解説します。

営業活動を行う上でのPDCAサイクルについての記事もご紹介しています。
こちらもご覧ください。
営業の生産性をアップする営業活動のためのPDCAサイクル

最初にインサイドセールスの役割・特長・導入の流れなどについて知りたい方は下記ページをご参照ください。
インサイドセールスとは?その役割・特長と導入の効果を徹底解説

「PDCA」によるインサイドセールスのマネジメント

なぜ「PDCA」がインサイドセールスのマネジメントにおいて重要なのでしょうか。その理由は、インサイドセールス業務の特徴に起因しています。

インサイドセールス業務の特徴

インサイドセールスとは、簡単に言えば「訪問しない営業」です。つまり、見込み顧客に対面することなくコミュニケーションを図ります。訪問営業のようにお客様の表情を伺いながらアドリブで対応をしたり、場の雰囲気でコミュニケーションをとったり、といったことが難しい業務です。

このような業務の性質から、あらかじめ会話の内容や流れを示す「シナリオ」を周到に準備します。インサイドセールスはシナリオをもとに見込み顧客と会話をするので、商談終了後に、会話の中でうまくいったところ、うまくいかなかったところを振り返ることができます。さらに、シナリオの精度を上げるために改善点を反映していく、というサイクルが成立します。このようにPDCAサイクルを回すことで、より会話の内容を充実させ商談成功率を高めることができるのです。

2つ目の特徴として「データドリブンなアプローチ」が可能であることが挙げられます。前述の通りインサイドセールスはシナリオに基づいて会話するため、会話データをシステムに登録して分析することができます。これにより、各インサイドセールスの会話スキルやその問題点・改善点を発見しやすくなります。

このように、シナリオの改善や会話スキル向上のためにはPDCAを用いたマネジメントサイクルが適しており、またそれを効果的に回す必要があるのです。

具体的なインサイドセールスのPDCA

インサイドセールス業務に関するPDCAサイクルの各ステップの内容を具体的に見ていきましょう。

  1. PLAN
    顧客のプロファイルや活動履歴によるターゲティングを行い、効果的な施策を立案します。施策の立案とは、ターゲットに対してどのようなプロモーションを行えば興味関心を喚起して受注確度を高められるのか、具体的に検討することです。また、チームの目標値を明確にするために「KPI設定」をするとよいでしょう。
  2. DO
    インサイドセールスが実際に見込み顧客へ営業活動を行っていきます。あらかじめ準備したシナリオに基づいてヒアリングを実施し、顧客別の状況確認や抱えている課題を特定し、自社の商材・サービスについて興味を持ってもらえるように働きかけます。
  3. CHECK
    1日何件の成果が上がったかなどの定量的な進捗確認も重要ですが、それだけではありません。うまく課題をヒアリングできない、などの阻害要因を特定することや、全体として施策が想定どおりに進行しているかなど、定性的な効果検証をしっかり行うことも重要です。
  4. ACTION
    CHECKのステップで抽出された阻害要因に対する改善策の立案などを行い、より成果が上がるように働きかけます。

こうしたサイクルを回していくことにより、行き当たりばったりの活動ではなく、再現性のある安定した活動が定着していき、営業活動の効果と質は着実に上がっていくでしょう。

 

インサイドセールスにおけるPDCA

PDCAサイクルの適切な頻度

PDCAサイクルは、「日次」「週次」「月次」「四半期」でそれぞれのスパンに適した粒度の課題を設定し、実行していくことが重要です。

  1. 日次
    日々の活動目標を立てます。例えば「今日は○件営業活動をする」など具体的な数値に落とし込むことで、ただ漠然と時間を過ごすのではなく、常に目標の達成度合を把握しながら活動していくのです。日々の目標を元に振り返りを行えば、問題の発見や課題解決も早期に実現できます。
  2. 週次・月次
    週次では個別案件の進捗を確認したり、当週の残課題の把握や次週のタスク設定等を行います。また月次では成果を定量的に測定し評価するなど、日次より大きいスパンでのPDCAサイクルを回すことで施策全体の進捗状況を俯瞰的に捉え、適切に軌道修正を図ることが可能です。
  3. 四半期
    会社の経営方針や営業施策に合わせて目標を設定します。インサイドセールスが会社のセールスエンジンとして機能し、また他部署とも足並みを揃えるため、振り返りを元にした活動方針を検討していきます。

PDCAに基づくマネジメントサイクル

インサイドセールス部門における上司の役割

さて、ここまで説明してきたPDCAサイクルを効果的に実行するためには、インサイドセールス部門が組織的に運用され、部門内外の関係者がそれぞれの役割を果たす必要があります。

インサイドセールス部門の組織と役割

まず、インサイドセールス業務に関係する各ポジションの「機能」や「ミッション」についてご紹介します。

現場業務を担うのは、インサイドセールスとスーパーバイザーです。インサイドセールスが実際に見込み顧客に(電話で)コールをし、スーパーバイザーがその現場の管理を担います。

また、計画立案したりシナリオを策定したりするプランナーという役割もありますが、マネージャーがプランナーを兼務する場合もあります。マネージャーはインサイドセールスの上司として、活動全体の管理やモチベーション管理、メンタルケアを含めたマネージメント業務を担います。

インサイドセールスのロール&ミッション

インサイドセールスの課題と悩み

では、インサイドセールスが抱えがちな課題や悩みは、具体的にどのようなものなのでしょうか。下記に具体例を挙げます。

  • 数多くの電話をかけているにもかかわらず、思うように成果が出ない
  • お客様からの拒否が続いてしまう
  • クレームを受けてしまった
  • 成果がなかなか出ず、やりがいを見出せない
  • 一人で活動するため、孤独を感じてしまう

一つひとつは小さい悩みのように思えるかもしれませんが、放置することは得策ではありません。これらのケアを怠ったために、インサイドセールスの悩みが解消されずに積み重なってしまい、結果的に大きな損失に繋がってしまうことも考えられるからです。

悩みが解消されず、前向きに業務に取り組むことが難しくなると、見込み顧客との会話の質が落ちてしまうこともあるでしょう。また、離職によって組織の力が落ちてしまうことも考えられます。こうした状況では、業務目標の達成から遠のいてしまいます。

それでは、インサイドセールス部門の上司はメンバーをどのようにケアするべきなのでしょうか。

積極的なコミュニケーションの積み重ねがカギ

メンバーの課題や悩みを解決するために最も重要なことは、上司から積極的にコミュニケーションすることです。インサイドセールス自らが、どこに課題があるのかを発見し解決できるよう導きましょう。このとき、個人の活動内容や売上など数字上の成果だけに着目してしまわないことが大切です。

具体的には、これまでどんなことがあったのか、何につまづいているのかなどを良く聞き取り、彼らの活動に関心を持つことから始めます。その上で、日頃の小さな成果について「よくやった」「助かった」などと声をかけ、積極的に褒めましょう。自分自身ではなかなか把握しにくい小さな成果を上司から評価されることで、本人に成功体験を自覚させるのです。こうすることで本人に自信がつき、やがて大きな成果をもたらすことに繋がるでしょう。

時には褒めるだけではなく、指摘や指導をすることも必要になるでしょう。その際は、できるだけ論理的に筋道を立てて話すことをお勧めします。感情的になったり理詰めで話してしまったりすることは避けましょう。ポイントは、「明日からまた頑張ろう」などという精神論で終わらせず、具体的に「明日からどのように業務にあたるか」などできるだけ具体的に導くことです。

では次に、こうしたコミュニケーションをどのように実施するか、ご紹介します。

定例会の開催

一定期間ごとに必ず実施する定例会を設定し、できれば少人数ではなくプロジェクトの関係者やチームメンバー全員で行います。

定例会の場では、それぞれのメンバーが日々の業務の中で体験したことや成功事例などを共有しましょう。また自身の日頃の業務内容について、自らの意見や感じたことを発信し、チームメンバーからフィードバックを得ることも重要です。

さらにメンバーの意識向上を図るために、全ての意見をドキュメント化することも効果的です。例えば、One Noteや共有ファイルなどにデータを蓄積し、チーム全体のノウハウを蓄積していくのです。これにより、チーム全体の経験値のベースアップが期待できます。

1on1ミーティング

1対1のミーティングも効果的です。

ここでは、どちらかが一方的に話を聞くだけにならないよう注意しましょう。インサイドセールス自身の言葉で現状や課題について話してもらうこと、また解決するためにはどのように行動したらいいかを自ら考え、実際に行動してもらうことが重要です。

これには、上司側から質問をしてインサイドセールスから言葉を引き出していく「コーチング」の要素が求められます。上司から「答え」を与えてしまった場合、本人はその場では理解したような気になっていても、実際には腹落ちしておらず、その後の行動に反映されないことは珍しくありません。自身で気づき、自らの言葉で発信することが肝要なのです。

おわりに

インサイドセールス導入の成功には、マネジメントサイクルの「PDCA」を実行し続けることが重要です。PDCAサイクルを回すことで早めの対策が可能になり、小さな傷が大きな傷になる前に塞ぐことができます。

また上司には、インサイドセールスのメンバーが前向きに取り組めるよう、モチベーションの管理やメンタルケアを図ることが求められます。できるだけこまめにコミュニケーションをとり、メンバー自らが解決策を見つけて行動できるように成長を促しましょう。

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2002年の設立以来、インサイドセールスによる法人営業改革の支援を行ってきた「ブリッジインターナショナル」。日本におけるインサイドセールスのリーディングカンパニーとして、IT、通信・情報、流通、製造などの幅広い業種の企業に対し、「仕組み」「リソース」「道具」などさまざまなインサイドセールスのサービスをご提供し、多くの実績を積み上げてきました。当コラムは、多数のクライアント企業でインサイドセールス組織の立ち上げ・導入支援・MA活用支援などに携わってきたコンサルタントが、これまで蓄積したノウハウを元に執筆したものです。

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