日本企業の事例で見る|インサイドセールスがBtoB事業の課題解決に役立つ理由

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日本企業の事例で見る|インサイドセールスがBtoB事業の課題解決に役立つ理由

この記事では、2000年代初頭にとある日本企業(小売業)において、BtoB事業を新たに立ち上げるために設立された「法人事業部」の事例を取り上げ、BtoC事業からBtoB事業へと新規参入した際の課題を振り返ります。当時まだインサイドセールスという営業手法はありませんでしたが、もしその時代にインサイドセールスがあったとしたら、当時の課題をどのように解決へ導くことができたのかを検証します。

1990年代以降の日本経済の変遷

インサイドセールスとBtoB事業(法人事業)との関係を語る前に、まず2000年代初頭の日本経済を振り返りましょう。

1991年頃起こったバブル崩壊を節目に、長い不況時代へと突入していた日本経済。失われた10年、または20年とも言われ、経済低迷、少子高齢化が進み、大手金融機関も銀行も経営破綻することが珍しくありませんでした。1998年には金融再生関連法が成立。大手金融機関破綻の影響は大きく、さまざまな業種に影響を及ぼすことになります。

消費者のライフスタイルに直結する流通小売業では消費マインドの低下が売上減少へと直結しました。そこで多くの企業では、これまで市場としていたターゲットとは別の市場を模索し始めました。

例えば、BtoC市場がターゲットだった小売業でも、商品力やブランド力を活かし、売上拡大を図るためBtoB事業へと参入する動きが見られました。

足で稼ぐ営業手法が主流だった時代

2000年当時、この企業の営業パーソンは足で稼ぐのが当たり前でした。「1日に10件訪問する」「アポはなかったが、飛び込みで20社入ってみる」など、上司や営業パーソン本人が考えた独自の手法で行動し、その行動力が評価の指針となっていました。

朝、事務所に寄って朝礼を済ませ、カバンにカタログやサンプルなどを詰め込み「行ってきます!」と出かけていく。先輩からは「背中を見て学べ」と教育されるので、それに続く後輩たちも日々のルーティーンに疑問を持たず、行動あるのみで営業活動を進めるのが実態でした。

足で稼ぐ営業手法が主流だった時代

BtoB事業への参入が営業手法を変更するターニングポイントだった

このような営業手法は、個人の営業力やモチベーションに大きく左右されるもので、個人の営業成績にも格差が出やすいものでした。

営業パーソンの評価には「売上」だけでなく、「訪問数」や「アポイントの数」も含まれることが多く、たとえそれらが成果(=売上)に繋がっていなくても良しとされることがあったのです。そのような背景から「効率の良さ」はしばしば度外視され、モチベーションと体力があれば高く評価される人もいました。

このような営業パーソンが、あることをきっかけに成果を出しにくくなりました。それが、「BtoC事業からBtoB事業への参入」です。

BtoB事業参入の背景と課題

BtoB事業新規参入の目的

この企業がBtoB事業へ参入した目的は、「自社製品のOEMやノベルティ商品としての拡充」や「自社資産であるコールセンター機能や物流倉庫を利用したソリューション営業の構築と売上拡大」でした。

こうした背景から、BtoB事業の柱を「卸売事業」と「ソリューション事業」の二つにわけて「法人事業部」を設立しました。

BtoB事業参入の背景と課題

自社製品のOEMやノベルティ商品の拡充「卸売事業」

一つ目の「卸売事業」に関しては比較的スムーズに売上拡大を図ることができました。卸売事業のなかでも売上のシェアを多く占めていたのが、企業ノベルティです。ノベルティという商品の特性上、毎年同じような時期に販促キャンペーンを行う企業が多く、既存顧客もたくさん存在していました。顧客側で予算を削減することがなければ、毎年決まった時期に決まった発注がくるという状況でした。

コールセンター機能や物流倉庫を販売する「ソリューション事業」

二つ目の「ソリューション事業」は、自社の資産(コールセンター機能や物流倉庫)を提案先企業の課題解決のため、カスタマイズして外販するというものでした。

この企業の強みは、業界内では高水準と言われていたコールセンターや物流機能です。同業他社もそのノウハウを習得しようと見学に来るほどでした。コールセンター機能や物流機能を運営していた「ノウハウ」を他社向けにカスタマイズして提案・販売していくということが、法人事業部設立の最大のミッションでした。

BtoB事業参入の背景と課題

法人事業部の組織体制

これまでの営業部は、営業部長・マネージャー・営業パーソンというシンプルな組織体制でしたが、この営業体制では法人事業としての営業戦略の立案などが難しいことから、新たに「事業企画チーム」を設けることになりました。

事業企画チームの役割は、戦略策定や予算管理などです。また営業チームへの提案や同行なども実施し、営業を全面的にバックアップするような位置付けです。

事業企画チームはこれまでの営業部門とは視点を変え、営業チームに戦略を伝え、どうしたらモチベーション高く活動してもらえるのか、あらゆる手段を使って営業チームを動かそうと試行錯誤を繰り返しました。

BtoC事業からBtoB事業に参入した営業チームの課題は3つ

営業パーソンを活性化するためには、気持ちよく働いてくれる環境や仕組み作りが欠かせません。当時どのようなことが営業チームの課題となっていたのか、事業企画チームの視点で整理してみました。

1. 営業リストがない

事業領域がまったく異なるため、営業リストがありませんでした。そのため自社役員から企業を紹介してもらったり、役員同行で既存取引先にアポイントを取ったりしていました。アポイントの時点でビジネスに興味があるかなどは確認していないため、ただの挨拶程度になってしまうものも多く、時間と労力だけが費やされる場面が多発していました。

2. これまでの営業手法が通用しない

「足で稼ぐ営業」を主軸に活動してきた営業パーソンたちは、新事業部発足に伴い売上金額が激減し、同時にモチベーションも下がってしまいました。

BtoB事業で扱う新たな商材は、従来のように商品説明をして販売するのではなく、まず課題を聞き出す「ソリューション営業」が求められます。しかし、そもそも「どのようにヒアリングしたらよいのか」「課題を引き出すのにどうしたらいいのかがわからない」といった声が多く、営業パーソンに教育が必要な状況に陥っていました。

3. 案件管理や顧客管理システムが煩雑だった

当時は、現在のように簡単かつ便利に利用できるクラウドサービスなどはなく、現場では「営業日報をまとめるだけでも大変なのに、やることが増えるのは面倒だ」とか「自分の顧客情報を他の営業に知られたら自分は損をしてしまう」といったように、「情報共有」や「見える化」などとはほど遠い意見が多く見られ、マネージャーも管理システムを有効活用していない状況でした。

このように2000年代初頭は、今では簡単に解決できるような課題がさまざまな企業で溢れていました。特にこの企業のように、事業領域の違う分野へ参入したケースではこうした課題が多発していたのです。

一方、ちょうどこの2000年頃に外資系企業の日本法人などを中心に、欧米諸国から持ち込まれた新たな営業手法が「インサイドセールス」です。

【参考記事:欧米諸国におけるインサイドセールスの進化 】

そのインサイドセールスを、当時この企業にもし導入していたら、どのように解決へと導けるのか課題別にみていきましょう。

インサイドセールスによる課題解決の可能性

インサイドセールスとは、文字通り「内側の営業」です。提供する商品やサービスによりますが、3つのスタイルに大別することができます。

インサイドセールスの手法・やり方

インサイドセールスと営業パーソン(フィールドセールス)とが、今ある顧客や課題に向き合い、効率よく分業することで、当時の課題は以下のように解決できる可能性があります。

インサイドセールス の役割についての詳しい記事はこちら|インサイドセールス とは?その役割・特徴と導入の効果を徹底解説

1. 「営業リスト」を作成し、インサイドセールスが発信作業を行う

営業リストへのアプローチはインサイドセールスが行う

役員の紹介先や取引先へのアプローチは可能だったため「新事業の紹介」のためのコール活動は可能でした。それをインサイドセールスが行うのです。

インサイドセールスによって、プッシュ型でリードに働きかけます。「新事業の案内」を軸として、インサイドセールスがリードのニーズを探ったり、そのニーズに合った情報を提供したりするなど、効率よく情報提供を行うことで案件化につなげます。

※新規顧客リストの作成について

この企業のケースは、顧客リストを全く持っていないという稀な例でしたが、ほとんどの企業が既存顧客のリストはお持ちでしょう。その場合は、「AIによるターゲティング」という手法でリスト自体を精査する方法も現代にはあります。

ターゲティングについての詳しい記事はこちら|効果的な営業リスト抽出を実現する「AIターゲティング」とは

2. インサイドセールスに業務を分担し、営業 (フィールドセールス)のスキルを強化する

ここで、ソリューション営業について少し触れてみます。ソリューション営業は「提案型営業」とも呼び、お客様の課題を聞いてそれを解決に導くよう提案する営業のことです。

ここでもインサイドセールスが活躍します。インサイドセールスはただ電話発信するのではなく、コミュニケーションデザインを考慮しお客様との対話を行います。そのため、お客様のニーズに限りなく近い課題を聞き出し、「案件化できるのか」「時期を変えれば案件化するのか」などの情報を把握したうえで、より確度の高いリードに絞って営業パーソン(フィールドセールス)に引き渡すことができるようになります。

このようにリードとのキャッチボールの大半をインサイドセールスへと分業することで、より確度の高い案件がフィールドセールスへと引き渡されることになります。リードに関する豊富な情報が事前に収集できることによって、フィールドセールス側も、これまでの営業力と知識で十分に営業活動が可能です。

さらに、インサイドセールスに業務を分担することで、従来の「足で稼ぐ」営業活動に費やしていた時間を、自社で提案可能なソリューションの知識や事例などの学習時間にあてることができるでしょう。

3. 案件管理や顧客管理のシステム活用が促進される

現在では、予算と要件に合わせカスタマイズできるクラウドサービスが多数存在します。
従来、営業(フィールドセールス)が登録していたリードの基本情報や初回接点の情報登録は、インサイドセールスに分担することができます。営業(フィールドセールス)に案件として引き渡された際には、既にリードとのやりとりの情報などが登録され、すぐに営業活動に活用できるでしょう。

このような利便性を体感すれば、営業(フィールドセールス)側のシステム利用促進もスムーズに進むことでしょう。

こちらもお読みください|BRIDGEのCRM/SFA実装支援サービス

このようにインサイドセールスを導入することで、この企業が2000年当時に抱えた多くの課題が解決できる可能性が検証できました。さらに、現代ではクラウドサービスなども上手に組み合わせることで、当時よりはるかに効率的な営業活動が実現可能であると言えるでしょう。

おわりに

2000年代当時、日本企業の中ではインサイドセールスが認知されていませんでしたが、昨今はインサイドセールスやリモート営業も盛んに行われています。そして、顧客側も時代と共に変化しています。この情報社会の中、自社の課題解決方法も安易に情報収集でき、営業活動も効率化が求められる時代です。

「インサイドセールス」はBtoB事業に適した営業手法です。そして、インサイドセールスとフィールドセールスを連携させることが非常に重要なポイントです。自社にあった方法で、効率的に売上拡大を目指していきましょう。

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2002年の設立以来、インサイドセールスによる法人営業改革の支援を行ってきた「ブリッジインターナショナル」。日本におけるインサイドセールスのリーディングカンパニーとして、IT、通信・情報、流通、製造などの幅広い業種の企業に対し、「仕組み」「リソース」「道具」などさまざまなインサイドセールスのサービスをご提供し、多くの実績を積み上げてきました。当コラムは、多数のクライアント企業でインサイドセールス組織の立ち上げ・導入支援・MA活用支援などに携わってきたコンサルタントが、これまで蓄積したノウハウを元に執筆したものです。

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