BtoBマーケティングにおいて「顧客インサイト」という概念は非常に重要です。しかし、顧客の深層心理を理解してマーケティング活動を行えている企業は意外と少ないものです。この記事では、顧客インサイトの意味や目的をおさらいしつつ、BtoBビジネスにおける顧客インサイトの調査方法についてもご紹介します。
目次
顧客インサイトとは?
顧客インサイトの意味
そもそも「インサイト(insight)」の直訳は「洞察」という意味ですが、BtoBマーケティングの世界で「顧客インサイト」という場合は「顧客の購買行動の裏にある本当の理由」を指しています。購買行動における顧客心理を「表面的に」理解するのではなく「深く」理解することがポイントです。
例えば、営業の業務効率を上げるためにSFAの導入を検討しているビジネスパーソンが、手始めに「SFA ツール」と検索したとしましょう。「どのようなSFAツールがあるのか調べたい、自社に合ったツールを見つけたい」という、表面的な顧客心理に対して「営業の業務を効率化させ、売上を高めたい」というのが、検索行動に至った潜在的な顧客心理(インサイト)です。
顧客インサイトから分かること
先の例にあげた「SFA ツール」と検索したビジネスパーソンに対し、営業の課題を詳しくヒアリングしてみると、実は顧客が求めていたSFAツールではなく、MAやCRMなど、別のツールの方が課題解決に適していると判明することがあります。また、現状のリソースだけで改善できるようにコンサルティングすることが最善である場合や、別のソリューションの提供が適しているケースなどもあります。
マーケティングとは顧客心理を深層まで理解して、集客数やコンバージョン数、ひいては売上アップを目指す取り組みに他なりません。顧客インサイトは、そうしたマーケティング活動において最も重要な概念と言っても過言ではないでしょう。表面に現れない潜在的な顧客心理まで深掘りし、その部分までしっかりフォローしてこそ、効果的なマーケティング施策につながるのです。
顧客インサイトを把握する目的
SFAツールの例で「ほかに適したソリューションがあるのではないか」というお話をしましたが、もう少し詳しく解説していきましょう。
先ほどの顧客インサイトは「営業活動の業務効率化を図りたい」であるように思えました。しかし、実は既に色々なSFAツールを試してみたものの、自社に合うものが見つかっていないだけかもしれません。その場合、顧客に対していきなりSFAやCRMといったソリューションを提案するのではなく「営業やマーケティングの何が課題なのか」「何をどう改善したいのか」を深掘りするべきです。潜在的な顧客心理を見落としたままでは、いくら便利そうなソフトウェアを導入しても、顧客に価値を提供できない可能性があります。具体的なソリューションの提供は、インサイトを把握してからの方が望ましいのです。
また、製品やサービス開発の局面においても同様のことが言えます。顧客インサイトを正しく把握せずに、ただ「良い商品を作ろう」としていても売上につながるとは限りません。たとえ競合他社との差別化ができていても、顧客の気持ちに寄り添わない限り、どのような商品やサービスも受け入れられないものとなってしまうでしょう。
顧客インサイトはアンケートよりヒアリングが有効
最後に、どのように顧客インサイトを調査すれば良いか、一例をご紹介します。
マーケティングリサーチのために顧客アンケートを実施している企業は少なくないでしょう。しかし、アンケートに代表される定量的な調査で得られるのは「顕在的なニーズ」であることがしばしばです。特に企業相手のBtoBビジネスの場合、すでに表面化しているニーズと、組織の「しがらみ」なども含めた潜在的なインサイトが異なっているケースが少なくありません。本当に価値のある顧客インサイトを把握するためには、顧客の属性や置かれた環境など、定性的なデータも得る必要があります。
そこで、顧客インサイト把握のために有効とされるのが、インタビューや座談会などといった「関係者へのヒアリング」です。ポイントは、質問項目を厳密に作り込まず、自然な会話の中からこぼれ落ちてくる「本音」を集めていくということです。
営業の業務効率化をツール導入で改善したい先の例の場合、ヒアリング以外にも、営業現場の労働状況や会社資料などを参考に「なぜ業務効率化が課題になってしまったのか」を仮説立てする材料を収集することも、顧客インサイトの把握に役立つでしょう。
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