当社ブリッジインターナショナル株式会社は、インサイドセールスによる法人営業改革支援を行ってきたリーディング・カンパニーです。
今回のコラムでは、アメリカ発祥の営業手法「インサイドセールス」の歴史と、欧米諸国で定着したいきさつ、そして日本でもインサイドセールスの導入企業が急増した経緯と理由を解説していきます。
目次
インサイドセールス誕生の要因は「アメリカの広大な国土」にあった
インサイドセールスは、国土の広大なアメリカで1990年代に生まれた営業手法です。国内で時差が存在するほどの広大な面積を誇るアメリカにおいて、フィールドセールスですべての営業活動を行うことは物理的に難しく、非効率でした。
アメリカではインターネット網が発達する前から、電話などによるアプローチ方法を使い、少ない営業リソースでより多くの顧客に接する方法が模索されていました。その試行錯誤のうえに生まれた営業手法が、インサイドセールスです。
欧米でインサイドセールスが定着した3つの理由
インサイドセールスがアメリカを筆頭に、欧州でも一般的なセールス手法として普及し定着したのには、3つの理由があります。
1つ目は前述したように、広い国土においても営業活動が効率的に行えるという点です。顧客との間に物理的な距離がある場面でも、電話やメール、チャット、TVチャットなどのITツールを活用すれば、営業活動が幅広く展開できます。
2つ目の理由は、欧米諸国の「スペシャリスト志向」という文化です。
日本では広範囲の知識や技術、経験を持った「ゼネラリスト」を重用する傾向がありますが、仕事の役割分担がはっきり分かれていることの多い欧米社会では、特定の分野に強みを持つスペシャリストが好まれています。
インサイドセールスは、プロセスを細かく分担して営業業務を進めるものです。このような分業のスタイルを受け入れる素地が、欧米企業にはすでにあったのです。
3つ目の理由は、アメリカの雇用傾向にあります。
アメリカの労働統計局が発表した2015年のデータによると、アメリカ人は18歳から48歳のあいだに平均11.7回転職するのだそうです。1社ごとの平均勤続年数は約4年で、日本の勤続年数の傾向(男性約12年、女性約8年※)と比べると非常に流動的です。つまり離職のリスクが高い欧米諸国において、属人性の高い営業モデルでは、ビジネス上のリスクも高まります。
欧米のビジネスシーンでは、役割分担を細かく決め、個々の仕事に責任を持ってもらう「スペシャリスト志向」の方が、企業にとっても労働者にとっても好都合なのです。
参照資料
図13-1 平均勤続年数|早わかり グラフでみる長期労働統計|労働政策研究・研修機構(JILPT)
日本国内で「インサイドセールス」が認知され始めたのは2005年ごろ
日本におけるインサイドセールスの認知度は、どう推移しているのでしょうか?「Googleトレンド」を使って「インサイドセールス」というキーワードの検索傾向を覗いてみましょう。
Googleトレンドは、検索エンジンで「どのキーワード」が「どのくらい検索されているか」がわかるツールです。サービス提供が開始された2004年から、つい最近までのキーワード需要が確認できます。「インサイドセールス」を検索してみると、最初に日本国内で検索需要が生まれたのは、2005年の3月であることがわかりました(上記画像)。
当社ブリッジインターナショナルの設立は2002年です。そこから3年を経た2005年ごろには、一般社会でも「インサイドセールス」という営業手法が認知されつつあったと言えます。
こちらの「インサイドセールス・ライフサイクル」の図をご覧ください。日本IBM、マイクロソフトジャパンといった外資系日本法人のイノベーター(※)がインサイドセールスを導入し始めたのが2000年前後、Google、HPといったアーリーアダプター(※)の導入が2005年あたりだったと明示されています。
※イノベーター:新しいサービスを最初期に取り込む革新的な層。イノベーター理論によると好奇心が強く「新しさ」に価値を見出し、情報感度が非常に高い。市場全体のわずか2.5%しかいない。
※アーリーアダプター:イノベーター層に続き、比較的早い段階で新しいサービスを利用する層。市場全体の13.5%を占める。後続のアーリーマジョリティ、レイトマジョリティといったユーザー層にも大きな影響を与える存在。
日本でもインサイドセールス導入の必然性が高まっている理由
ここまでは欧米における「インサイドセールス普及の歴史」をお話ししてきましたが、検索需要解説の段落でもお伝えしたように、最近では日本でもインサイドセールスへの注目が集まっています。
その要因として、下記の3つのポイントが上げられます。
1.少子高齢化による就業人口の減少
日本の就業人口は、少子高齢化の影響により減少傾向にあります。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口データ(平成29年推計)によると、15歳から64歳の生産年齢人口の割合は、2060年には51.6%に縮小していくと予想されています。
総務省統計局の国勢調査によると、日本の生産年齢人口割合のピークは1970年の68.9%で、2015年では60.7%。つまりピーク時の1970年からは17.4%下落、2015年からも9.1%下落する見込みなのです。
生産年齢人口の推移
グラフ参照資料
- 1970年の人口データは総務省の人口推移グラフより
- 2060年の推計人口は国立社会保障・人口問題研究所の平成29年推計の解説および条件付推計のP21より
このまま行くと就業人口が減っていく事態は避けられません。現時点ですでに人手不足に悩んでいる企業は、一刻も早く営業効率の高い組織体制づくりに乗り出す必要があります。IoTやAIといったIT技術の活用だけでなく、インサイドセールスのような効率的な営業の仕組みを導入することは急務と言ってもいいでしょう。
2.法人営業職は若年層に不人気。解消のカギは「インサイドセールス導入」にある?
法人営業職と聞くと「大変そうだな」「なりたくないな」と敬遠する人も少なくないでしょう。何を隠そう当社ブリッジインターナショナルの営業本部長も、就活当時はシステムエンジニア志望で、営業職には苦手意識を持っていたそうです。
営業といえば企業の要となる重要な部署です。「花形」ともてはやされる時代もありました。それにも関わらず敬遠されてしまうのは、ノルマ達成、セールストークへの苦手意識、といった心理的負担が大きいからでしょう。とくに営業職への明確なイメージがまだない新卒の就活生にとっては、一番避けたい部門かもしれません。
少子高齢化が進む日本社会において、さまざまな現場ですでに人手不足が発生していますが、とくに法人営業への志望者は少ないため、スタッフの獲得はますます厳しくなってくるはずです。
そこでおすすめしたいのが「インサイドセールス」の導入です。インサイドセールスが不人気による人材不足のソリューションになりえる理由については、後日インサイドセールス求人に関するコラムで解説する予定です。
3.日本でも雇用の流動化傾向が強まっている
2007年から2008年ごろに起こった世界的な金融危機「リーマン・ショック」では、景気後退の波が日本にも押し寄せてきました。急速な景気の悪化とともに雇用情勢も悪化し、2010年ごろから非正規雇用が年々増加しています。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査データ「データブック国際労働比較2018(PDF)」に記載されている「青少年(18〜24歳)の転職に対する考え方」というデータからも「転職も致し方ない」という考えが若年層のあいだで強まっている傾向が見て取れます。
転職について「つらくても転職せず一生一つの職場で働き続けるべき」と回答した青少年の割合は、バブル景気崩壊後の「失われた10年」に該当する1998年時点では、全体の9.6%でした。続いて2003年では10.3%、2008年には12.5%と徐々に復活していますが、2013年には再び4.8%にまで減じています。
不況の中で生まれ育ち、終身雇用制度という言葉を聞いたことがない若年層からすれば、この調査結果は当然かもしれません。日本を代表する大企業トヨタの社長も、2019年時点で「終身雇用を守るのは難しい」と発言しており、終身雇用制度の復権は依然として厳しい状況です。
雇用の流動化によるリスクを最小限におさえるには、属人的な営業スタイルから脱却する必要があります。そこで注目されるようになったのが、インサイドセールスなのです。
「インターネットの発達」と「顧客行動の変化」がインサイドセールス発展を後押し
インターネットの登場によるユーザー行動の変化も、インサイドセールスの発展を後押ししています。目当てのサービスや製品の情報は、インターネット上に湯水のようにあふれています。誰しもが情報収集をしやすくなり、購買のプロセスまでインターネット上で簡潔に済むようになりました。
BtoB営業でもネット上だけでクロージングに至るケースも珍しくない
顧客行動の変化はBtoCだけでなく、BtoBにおいても同様です。今までは営業担当者と直接会ってサービス案内をしてもらい、検討段階を経てクロージング(契約締結)というパターンが一般的でした。
しかし今やBtoBにおける高額なサービスの導入においても、一度も担当者と会わずに資料をインターネット上でダウンロードし、インサイドセールスなどを経て最終的にメールで契約書を交わす、といったことが可能になったのです。
顧客ニーズにも変化あり
顧客行動が変容したことによって、営業活動への意識やニーズも変わってきました。当社の営業シーンでも、2000年以前までは電話やメールで営業アプローチをかけると、顧客からは「なぜ直接足を運ばないのか?」「顧客軽視なのか?」といった反応が見られたものです。
ITツールの活用が当たり前になってきた現代では、時間調整や場所の手配など、手間暇のかかる対面営業の方が面倒に感じる、という顧客の声が増えました。
さらにMA/SFA/CRMなどのマーケティングや営業系のツールの普及も、インサイドセールスがやりやすくなった要因としてあげられます。
マーケティング・営業ツール解説
インサイドセールスに必要なツールや検討したいサービス
営業活動は「検討キャッチ型」から「課題発掘型」に転換を迫られている
その一方で、購買行動の変化と、成熟市場が増えたことから、マーケティングや営業活動のあり方も変換を迫られています。広告などを多用した「検討キャッチ型」だけでは顧客獲得が難しくなってきたのです。これからのマーケティングと営業活動には「課題発掘型」が求められています。
商品の性能や機能、価格で勝負していくのではなく、営業と顧客の関係性を深めて、次の展開へとつなげていく、営業パーソンから顧客への「能動的な働きかけ」が重要なのです。
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インサイドセールスとは?顧客深耕:顧客関係性管理の役割
まとめ
インサイドセールスの誕生から発展の歴史を、ざっと振り返りました。今回は割愛しましたが、当社のこれまでの歩みや、インサイドセールスの導入支援をした国内企業の増加推移についても、別の機会にお伝えできればと考えています。
また、今回解説したような営業リソースの不足に悩んでいる方は、この機会にインサイドセールスの導入を検討してみてはいかがでしょうか?
インサイドセールスに興味を持たれた方は、下記資料のダウンロードをおすすめします。
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