コンサルタントが語る!【IT商材編】インサイドセールスを成功に導くノウハウ集

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コラム
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コンサルタントが語る!【IT商材編】インサイドセールスを成功に導くノウハウ集

進むIoT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)、クラウドサービスの普及など、いまやITの力なしに私たちの生活やビジネスは成り立ちません。IT製品やサービスの需要が高まるなか、販売する企業側も日々営業リソースの確保や効果的なアプローチを模索しています。

この記事では、インサイドセールスを成功に導くノウハウ集として、IT商材の販売でインサイドセールスを導入した企業の例を、導入モデル別に3つご紹介します。

中堅SIer企業|フィールドセールスとの分業体制で、リード数14倍/パイプライン数20倍に

クライアント:中堅SIer企業
導入したインサイドセールスモデル:「ステージ分担型」
インサイドセールスの手法1.ステージ分担型 「セールスステージ」に応じてインサイドセールスとフィールドセールスが分業する
商材:SI(システムインテグレーション)
成果:リード数14倍、パイプライン数20倍へ増加
インサイドセールス導入の背景:

  • 取引高トップ20が売上の90%を占めていた(顧客に偏りがあった)
  • 新規・休眠顧客へのアプローチ不足

この事例のポイント

  • 社内にマーケティング業務やインサイドセールスの経験者がいなくても、知見を持つ専門業社と手を組んで工夫をすることで社内に仕組みを構築した
  • 社内の他部署や経営層を巻き込み、プロジェクトに対する共通認識を持って社をあげて取り組んだ

SIという商材の特性上、顧客のほとんどは数年に1度の更新のタイミングで設備投資を検討します。営業担当は主に直近の売上につながる更新間近の企業を中心にアプローチするため、それ以外の企業を定常的にフォローできていない状態でした。

更新の時期を外れた顧客に対する継続的なサポートやフォローの必要性は認識していても、社内の営業リソースは限られており、新規顧客開拓と休眠顧客へのアプローチにまで手が回っていませんでした。

インサイドセールス導入に成功した4つのポイント

ステージ分担型のモデルでインサイドセールスを進めるには、フィールドセールス(訪問営業)との連携は欠かせません。インサイドセールスがアプローチする企業の情報は事前に受注確度によってセグメント分けし、フィールドセールス(訪問営業)との担当ステージの境目を明確にしておく必要があります。

また社内の他部署や経営層の理解と協力を得ることも重要なポイントです。

1.ターゲット企業とフィールドセールス(訪問営業)へのトス基準の見直し

  • インサイドセールスがアプローチする企業の選定
  • フィールドセールスにトスアップするための基準(BANT情報の取得条件)

を設定し、実際にインサイドセールスがコールしてみた感触や顧客の反応を考慮しながら、ターゲット企業の変更やBANT情報の取得基準の見直しを行いました。

2.インサイドセールス向けの勉強会を実施

SIはその特性上、決まった型にはめて提案することが難しい商材です。
主に事例を中心に、フィールドセールス(訪問営業)が受ける教育と同じ内容をインサイドセールスも定期的に受け、課題解決型の提案力のトレーニングを行いました。

3.フィールドセールス(訪問営業)へトスアップ後も案件フォロー

インサイドセールスからフィールドセールスへスムーズに案件を引き渡すため、フィールドセールスがトスアップされた案件に初めてコンタクトをとる際はできるだけマーケティンググループも同席するようにしました。

また、トスアップの基準をわずかに満たしていないリードであっても、熟達した経験者の目で見れば、実はポテンシャルの高いリードと判断できることもあります。可能性のあるリードを案件化を主導する立場として、社内にマーケティング部門と営業部門を取り持つ「ソリューション推進グループ」を新設し連携を図りました。

4.社内認知度の向上

インサイドセールスの貢献度を可視化してフィールドセールスへアピール
経営層への定期的な報告(必要であれば、インサイドセールス業務の依頼主と依頼元企業のトップ同士で会話してもらう)

今後はデジタルマーケティングの推進を加速させるべく、MA(マーケティングオートメーション)を活用を検討しています。

メディア企業|インサイドセールスだけで売り切る仕組みを構築し、月売上1.5倍に

インサイドセールスのメリット/デメリット【IT業界編】

クライアント:大手メディア
導入したインサイドセールスモデル:「顧客分担型」
インサイドセールスの手法2.顧客分担型 「顧客セグメント」によって分担する
商材:デジタルコンテンツ配信サービス
成果:

  • 月売上1.5倍
  • 会員増ペース約2倍
  • 代理店販売100%から直販比率85%へ(うち約半数はインサイドセールスで完結)
  • 月間解約率0.4%

この事例のポイント

  • デジタルコンテンツという法人向けとしては単価の低い商材を、自社リソースで売り切る仕組みを構築した。
  • 従来エンドユーザーと接点を持っていなかったメディア企業が、インサイドセールスの導入により顧客接点をより多く持つことができ、課題解決型の提案が実施可能になった。「顧客の声」をサービスに反映できるようになり、顧客体験(CX)改善を実現した。

一部メディアのビジネスモデルは、提携する販売店が顧客へ情報を届ける、パートナービジネスが一般的です。そのためクライアントは当初顧客と直接の接点もなければ、社内にエンドユーザーの情報も持ち合わせていませんでした。

メディア業界では紙媒体からデジタルコンテンツへのシフトが年々顕著となり、今回のクライアントが個人向けに展開したデジタルコンテンツ配信サービスも順調に会員数を伸ばしていきました。そしてさらなるビジネス拡大のため、法人向けサービスも開始。新規問い合わせなどインバウンドを中心にインサイドセールス導入しトライアル利用を推進することになりました。

インバウンドを中心にインサイドセールスの導入を開始

BtoB事業推進にあたって、販売代理店との協業モデルから直販部隊による直接の顧客アプローチへと商流を大きく変革させることになり、社内外で大きな議論を呼びました。

まずは販売システムを刷新し、手続きや管理業務の自動化、小口案件を自社で捌くための環境を整えました。そして顧客からの問い合わせ(インバウンド)対応をインサイドセールスによって強化し、これまで契約の申し込みを待っていた姿勢から、積極的にサービスのトライアル利用を促す活動を始めました。

セールスプロセスの図

上記の図は、インサイドセールスプロジェクトのセールスプロセスを示しています。

リード(見込顧客)が営業プロセスのどの段階にいるかによって8つのステージに分類し、次のステージへ移行するための基準を「移行条件」として明確に設定しています。
(例:Stage4のリードがトライアルの申し込みをしたらStage5へと引き上げ)

各ステージにおいて、強化すべきポイントを「優先活動(青色の矢印)」として位置付け、重点的に対応します。サブスクリプション型の販売モデルでは離反防止が大変重要です。トライアル利用の申し込み、および本契約後は一定期間ウォッチを続け、タイミングを決めてフォローを徹底しました。

基本的には、初回アプローチから契約までインサイドセールスで完結できるよう業務設計を行ないつつ、一部フィールドセールスの対応が必要な顧客のみ販売店が個別にフォローを行う体制を敷きました。

インサイドセールス導入の効果

社内の営業サイクル構築

具体的な成果

  • 対応時間の改善
    問い合わせから商談へのリードタイム縮小
  • 課題把握
    確度の低い顧客へはパンフレットの送付のみだった対応を改め、課題把握に注力
  • データ活用
    Webの問い合わせからリードの属性/業種/従業員規模などをCRM上に自動反映
  • トライアルの状態を把握
    トライアルライセンスをきちんと使ってくれているかを確認
  • フィードバック
    施策やキャンペーンに対するVOC(※)を拾えるようになったことで営業品質の見直しを実現

※VOC=顧客の声。Voice of Customerの略。

  • プロダクト中心の販売から課題に合わせた提案へ変化
  • 受注前にボトルネックの把握と解消を実現
  • 属人的な営業スタイルの定型化

今後はインサイドセールス業務の高度化と、さらなるCXの向上が目標です。

大手IT企業|インサイドセールスとフィールドセールスでのハイブリッド型の個別運営モデル

クライアント:大手IT企業
導入したインサイドセールスモデル:「個別チーム運営型」
インサイドセールスの手法3.個別チーム運営型 インサイドセールスとフィールドセールスからなるチームを編成する
商材:クラウドコンピューティングサービス

「個別チーム運営型」のモデルは、インサイドセールスとフィールドセールスがひとつのチーム内で、適宜業務を分担して営業活動を遂行するモデルです。今回のクライアントの場合、販売代理店となるパートナー企業もひとつのチームとして施策に参画していますが、顧客状況や案件状況、作業負荷の状況に応じて二人三脚で顧客対応・営業活動に従事します。

インサイドセールスの担当業務

コンタクト発掘

・新規コンタクト発掘
・キーマン発掘
・コンタクト情報取得

プロファイル取得

・既存システム確認
・定常的な情報提供

課題ヒアリング

・課題ヒアリング
・BANTの確認

導入後フォロー

・アクティベーション確認
・その他需要確認

インサイドセールスとフィールドセールスの担当業務

製品訴求

・製品提案
・検討状況確認

案件創出・醸成

・Partner連携
・進捗確認

Partnerの担当業務

受注

・受注確認

情報連携の方法

  • Microsoft Teams
  • メール

Teamsに担当アカウント毎のグループを作成し、案件の進捗状況や訪問結果などをタイムリーにシェアします。日々の活動報告は、インサイドセールスから直接担当のフィールドセールスにメールで行い、相談ごとがあればメール内で解決をします。

おわりに

IT商材と一口にいっても、製品やサービスの特徴、社内の営業環境によって適したインサイドセールスモデルは異なります。新たにインサイドセールスの施策を検討する際は、自社で扱う商材や営業リソースをよく見極めて導入することをおすすめします。

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2002年の設立以来、インサイドセールスによる法人営業改革の支援を行ってきた「ブリッジインターナショナル」。日本におけるインサイドセールスのリーディングカンパニーとして、IT、通信・情報、流通、製造などの幅広い業種の企業に対し、「仕組み」「リソース」「道具」などさまざまなインサイドセールスのサービスをご提供し、多くの実績を積み上げてきました。当コラムは、多数のクライアント企業でインサイドセールス組織の立ち上げ・導入支援・MA活用支援などに携わってきたコンサルタントが、これまで蓄積したノウハウを元に執筆したものです。

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