【IT商材編】インサイドセールスのメリット/デメリット

インサイドセールス 導入事例
コラム
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インサイドセールスのメリット/デメリット【IT業界編】

近年目覚ましい成長をみせているクラウドサービスやSaaSなどのIT商材はインサイドセールスとの相性が良く、多くのIT系企業がインサイドセールス活用によって業績を伸ばしています。

法人向けの商材は比較的単価が高く、課題解決型のアプローチが重要であるため、終始非対面で営業活動を行うインサイドセールスのみで対応するのは難しいと思われがちです。しかし、商材の特性をうまく見極め、単価の低い商材に限定するなど策をこらせば、案件発掘から受注、アフターフォローまでインサイドセールスが完結させることも可能です。

この記事では、インサイドセールス導入の3つのモデルのうち「顧客分担型」の成功事例である大手メディアの取り組みをご紹介します。長年、エンドユーザに直接営業活動をすることをしていなかったメディア企業が、インサイドセールスを通じて法人市場へと商圏拡大に成功した貴重な事例です。

【参考記事:インサイドセールスの手法・やり方

この記事で紹介する事例の要約

クライアント:大手メディア A社様
導入時期:2017年2月〜 開始当初、業務委託にて3名をインサイドセールスとして動員
商材:デジタルコンテンツ配信サービス(法人向け、サブスクリプション型)
成果:
・月売上1.5倍
・会員増ペース約2倍
・代理店販売100%から直販比率85%へ(うち約半数はインサイドセールスで完結)
・月間解約率0.4%

大手メディアのA社様は長年、コンテンツを制作し紙媒体の販売をメイン事業としていましたが、時代の流れと共に顧客を取り巻く環境のデジタル化が加速。A社様は個人客向けにデジタルコンテンツの配信サービスを開始しました。

デジタルマーケティングが進む中、ユーザーの登録データや利用状況に合わせたサービス提供は、顧客体験(CX)の向上が叫ばれ始めた当時、全社を揚げる大きなテーマとなりました。しかし、顧客と直接の接点を持たない販売店ビジネスを行ってきた一部メディアは、エンドユーザーの情報を知る術がなく、旧来のビジネスモデルを見直すタイミングを迎えていました。

個人向けのデジタルコンテンツが順調に会員数を伸ばす中、更なるビジネス拡大のため法人向けのデジタルコンテンツ配信サービスの商品化が決定。推進にあたり直販営業部隊を新設することになりましたが、エンドユーザへ直接コンタクトしてこなかった商流から直接コンタクトする動きは、社内外で議論を呼びました。

単価の低い商材を自社の営業リソースで賄うことはこれまで非効率とされてきましたが、インサイドセールスを配置することで、リソースを最小限に抑えつつ効果の最大化を目指しました。

この事例のポイント

  • デジタルコンテンツという法人向けとしては単価の低い商材を、自社リソースで売り切る仕組みを構築した。
  • 従来エンドユーザーと接点を持っていなかったメディアが、インサイドセールスの導入により顧客接点および課題解決型の提案機会を創出。「顧客の声」をサービスに反映できるようになり、顧客体験(CX)改善を実現した。

インサイドセールス導入の背景

事業環境の変化

一部メディアのビジネスモデルは、提携する販売店が顧客へ情報を届ける、パートナービジネスが一般的です。そのためA社様は顧客と直接の接点もなければ、社内にエンドユーザーの情報も持ち合わせていませんでした。

紙媒体の価値そのものは大きく変わらないものの、デジタルコンテンツへのシフトは顕著であり、A社様は以下の3つを軸に新たな事業戦略の推進を始めました。

  • デジタルシフト
  • データ・ドリブン
  • グローバル展開

BtoB市場への参入|仕事のための情報収集が個人負担で良いのか?

コンテンツのデジタル化は、現代人にとって多くのメリットがあり、会員数は順調に伸びていきました。

しかし個人会員のダイナミックな伸び幅に対し、法人の契約率は当時決して高くありませんでした。その背景には「仕事のための情報収集であっても、手段や費用負担は個人任せ」という風潮が社会に根強く浸透してきたことが影響していました。情報誌や有料コンテンツも企業単位で契約するものではなく、個人負担で賄うべきものというBtoC向けのイメージが強かったのです。

オフタイム(出勤前やランチタイム)の利用が目立っていたことや、情報収集が業務として認知されていない日本の社会常識に、A社様はビジネスチャンスを見出し、積極的に推進を始めました。

そして、BtoB向けに高付加価値を搭載した法人向けのデジタルコンテンツ配信サービスを開始しました。

インバウンドを中心にインサイドセールスの導入を開始

メディアにおける代理店販売モデルは、単価の低い商材を効率的に販売できる一方、エンドユーザーと直接の接点がないため自社に顧客情報を蓄積する術がありません。

BtoB事業推進にあたり、販売代理店との協業モデルから直販部隊による直接の顧客アプローチへと商流を大きく変革させることになりましたが、営業リソースや組織体制が整っていたとは言えない状態でした。

そこでまずは販売システムの刷新を行い、手続きや管理業務の自動化、小口案件を自社で大きく捌くための環境を整えました。そして顧客からの問い合わせ(インバウンド)対応をインサイドセールスによって強化し、これまで契約の申し込みを待っていた姿勢から、積極的にサービスのお試しを促すトライアル利用の推進を始めました。

セールスプロセスの図

上記の図は、インサイドセールスプロジェクトのセールスプロセスを示しています。

リード(見込顧客)が営業プロセスのどの段階にいるかによって8つのステージに分類し、次のステージへ移行するための基準を「移行条件」として明確に設定しています。
(例:Stage4のリードがトライアルの申し込みをしたらStage5へと引き上げ)

各ステージにおいて、強化すべきポイントを「優先活動(青色の矢印)」として位置付け、重点的に対応します。サブスクリプション型の販売モデルでは離反防止が大変重要です。トライアル利用の申し込み、および本契約後は一定期間ウォッチを続け、タイミングを決めてフォローを徹底しました。

基本的には、最初から最後までインサイドセールスで完結できるよう業務設計を行ないつつ、一部フィールドセールスの対応が必要な顧客のみ販売店が個別にフォローを行う体制を敷きました。

インサイドセールス導入の効果

インサイドセールス導入の効果

プロジェクト実施の前と現在との比較

  • 月売上1.5倍
  • 会員増ペース約2倍
  • 代理店販売100%から直販比率85%へ(うち約半数はインサイドセールスで完結)
  • 月間解約率0.4%
  • 低解約率と純増を毎月維持

社内の営業サイクル構築に成功

インサイドセールスの導入によって、従来の販売代理店事業では成し得なかった、データの活用や顧客状況の把握、施策へのフィードバックやサービスへの反映まで、社内に営業のPDCAサイクルを構築することに成功しました。

具体的な成果

  • 対応時間の改善
    問い合わせから商談へのリードタイム縮小
  • 課題把握
    確度の低い顧客へはパンフレットの送付のみだった対応を改め、課題把握に注力
  • データ活用
    Webの問い合わせからリードの属性/業種/従業員規模などをCRM上に自動反映
  • トライアルの状態を把握
    トライアルライセンスをきちんと使ってくれているかを確認
  • フィードバック
    施策やキャンペーンに対するVOC(※)を拾えるようになったことで営業品質の見直しを実現

※VOC=顧客の声。Voice of Customerの略。

プロダクト中心の販売から課題に合わせた提案へ変化

自社には複数のサービス群が存在しますが、顧客はそれらの全体像を把握しているわけではありません。そこでA社様はサービスやプロダクトに対する問い合わせに対し、断片的な回答を行うだけでなく、まずは問い合わせの背景にある課題を聞き出し、顧客の課題に合わせた最適なソリューションの提供へと少しずつ変化しました。

受注前にボトルネックの把握と解消を実現

トライアル利用の導入に加え、インサイドセールスの導入によって、例えば「毎月の課金のタイミングがわからない」「この情報を閲覧したいが操作方法がわからない」といった具体的な声を拾えるようになりました。これまで不透明だった契約前のボトルネックが把握でき、言葉だけでは伝わりづらい操作方法はWeb会議ツールの活用で丁寧に紹介でき、本契約に結びつきやすいプロセスが構築できました。

属人的な営業スタイルの定型化

当時、A社様の営業部隊は営業パーソン個人の裁量に営業活動のほとんどを任せていたといいます。インサイドセールス導入が決まり、業務委託を開始するにあたり自社の営業ノウハウを伝えるための具体的な営業ツールが存在しませんでした。

そこで、属人化していた営業の手段を初めて定型化することになりました。インサイドセールスにこれまでの経験値を形式知として落とし込む過程は、プロジェクトに取り組んだ半年間の中で一番の大きな成果だったといいます。

インサイドセールスをアウトソーシングしてみて

マネジメント・レポート業務についての感想

「インサイドセールスを構成していた営業チームのメンバーは最終的に9.5人。10名近いメンバーの管理業務を社内で担うのは現実的ではありませんでしたが、マネジメントも含めて委託できたのは大変助かりました。

日々の活動報告は、日次あるいは週次単位でレポートを提出いただき安心してお任せできました。きめ細かく情報を共有してくれるので、日常の業務で気がつかないような示唆や発見があり刺激を受けました。

業務上のやり取りについては、クラウド型の情報共有ツールやコミュニケーションツールで活発に応酬していて、不自由を感じることはありませんでした。互いに拠点が離れていたので物理的な距離はあったのですが、距離感なく連携が取れたと感じています。」

今後の展望と課題について

A社様は今後、以下のようなインサイドセールス業務の高度化と、さらなるCXの向上を目指されています。

  • MAによる定型業務の効率化
  • インサイドセールスからパートナーへのベストプラクティス(販売ノウハウ)の発信
  • インサイドセールスとフィールドセールスによるキーアカウントへの対応強化(ABM連携)

おわりに

インサイドセールスを活用すれば、これまで不可能と考えられてきた市場へ商圏を広げることができます。クラウド型ビジネスの台頭は、BtoB市場へもサブスクリプション型のビジネスモデルを一気に拡大させましたが、もともとBtoC向けのイメージが強い媒体をBtoB向けに展開する試みは当時まだ珍しいものでした。

今回のクライアントである大手メディアA社様は、情報収集が業務として認められていない社会の慣習に疑問を呈し、自社サービスの推進によってビジネスパーソンの情報摂取のあり方を積極的に変えていきました。「顧客体験(CX)の改善」という事業テーマにこだわりを持ってプロジェクトを進めたことも、成功の秘訣といえるのではないでしょうか。

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2002年の設立以来、インサイドセールスによる法人営業改革の支援を行ってきた「ブリッジインターナショナル」。日本におけるインサイドセールスのリーディングカンパニーとして、IT、通信・情報、流通、製造などの幅広い業種の企業に対し、「仕組み」「リソース」「道具」などさまざまなインサイドセールスのサービスをご提供し、多くの実績を積み上げてきました。当コラムは、多数のクライアント企業でインサイドセールス組織の立ち上げ・導入支援・MA活用支援などに携わってきたコンサルタントが、これまで蓄積したノウハウを元に執筆したものです。

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