2021年10月20日(水)21日(木)の2日間に渡って開催、大盛況のうちに終了した弊社主催オンラインイベント「営業DX Forum 2021」。
今回は、当グループClieXito株式会社 取締役副社長 北村寿雄による講演『営業DXの成功要因とは』の内容に基づき、弊社にて実施した営業DX実態調査の結果と、そこから得た営業DXを推進する上での重要なポイントについてご紹介します。
目次
営業DXの実態 遅れる営業DX推進への不満
調査概要
本調査の実施目的は、企業における営業DXの推進状況や課題を把握し、営業DXを成功に導く示唆を明確化します。
回答企業のプロファイルとしては、8割が直販または直販・パートナー販売の両方を実施。また、企業規模は大企業寄りでした。
デジタルを営業活動に活かす”営業DX”の基本を解説した記事はこちら
営業DX取組みのきっかけはコロナ
回答企業のうち、約3分の2は2年以内に営業DXに着手していることから、コロナの感染拡大がきっかけとなっている企業が多いことが推測されます。一方で、残りの3分の1は2年より前に着手しており、営業DXに関して先進的な企業といえます。
営業DXに着手した目的として一番多かった回答は「売上改善」でした。次いで、「顧客満足度(顧客経験)の向上」、「競合との差別化」といったマーケティング視点で目的を設定する企業も多いという傾向が伺えました。
営業DXを推進するのは営業部門とは限らない
一番多いのは営業が主管部門となって推進するケースですが割合としては約4分の1で、残りは経営企画やDX専門部署などさまざまな部門が主導しており、企業によって推進体制に違いがあることが判明しました。
約6割の企業が外部の業者の支援を活用している、あるいは活用を予定しているということが判明しています。また、外部業者には営業DX方針策定や具体的な施策立案といった上流工程の支援への期待値が高い傾向が見受けられました。
MA、SFA、CRMといった管理基盤ツールの導入が主流に
取組領域は、MA、SFA、CRMといった管理基盤の整備に取り組んでいる割合が比較的高いです。商談/クロージング、契約における取組みも多いのですが、これはコロナ禍の影響によってオンライン商談ツールや電子契約のようなツールの利用が高まったという背景があるのではないかと考えています。次に取組みの高い領域は、マーケティングやカスタマーサクセスとなっており、セールスイネーブルメントや新規ビジネスモデルへの取組はまだ一部の企業しか取り組んでいないことが分かります。
営業DXの推進進捗の満足度
営業DX推進の進捗に対しては若干不満が多い傾向が見て取れます。
この各々の要因について深掘りすると「不満」・「満足」に繋がった要因の上位は「執行体制の構築」「現場への浸透」「方針策定」など、要因がほぼ重複していることが明らかになりました。唯一大きく違う点は、「社内人材の専門スキル」が「不満」要因では一番回答数が多かったのに対し、「満足」の要因でとらえると6番の位置づけになっています。つまり、進捗に満足している企業にとっては、必ずしも専門スキルが成功要因になっているというわけではないということです。
実態調査からわかった3つの成功要因
これらの実態調査から得られた営業DX推進の成功要因は以下の3つです。
- 社内の関係者を巻き込み、変革を推進する人材
- ビジネスゴールの優先度に応じて取組みを立案するアプローチ
- 体制上の役割定義とそれに応じた採用・育成・調達
ひとつずつ説明いたします。
成功要因1.社内の関係者を巻き込み、変革を推進する人材
まず、変革・現場への浸透を推進する人材、つまりチェンジリーダーのアサインが非常に重要です。チェンジリーダーは、社内の変革に向け、コミュニケーションを計画してしっかり浸透させる、ステークホルダーの意識・行動変容のための施策を実施していくといったチェンジマネジメントの主導を担っていきます。社内関係者との人脈や社内風土への理解を踏まえると、社内メンバーでの実行が必須だと考えています。
成功要因2.ビジネスゴールの優先度に応じて取組みを立案するアプローチ
2つめは方針策定に関して、営業部門の目標を起点として取り組むべき施策の落とし込みを行うことが大切です。まずは「営業部門の目標優先順位付け」をし、次に「営業ドライバーの見極め」、そしてその営業ドライバーが実現するために求められる「ケイパビリティの定義」、最終的にはケイパビリティを実現するための「テクノロジー選定」、このような手順で進めていくことによって、システム・ツールありきの検討を避けられます。
成功要因3.体制上の役割定義とそれに応じた採用・育成・調達
最後に、DXの推進体制の構築が成功の要因になるというところでは、推進体制のなかでの明確な役割分担と担うメンバーの能力に応じてリソースの調達方針を考えていくのが必要です。役割の一例としては、
- チェンジリーダー(変革を現場への浸透を推進)
- ビジネスプロデューサー(ビジネスモデル・業務の企画)
- テクノロジーアーキテクト(テクノロジー、インフラ・アプリケーションの方針策定)
- デザイナー(UX・UIという観点での企画・施策を立案・実行)
- テクノロジスト(AIやIoTのような採用すべきテクノロジーの選定、導入)
が必要と考えられています。この定義された推進体制に応じて、社内で採用、育成を行うのか、あるいは外部のメンバーを採用してワンチームとして進めていくのか、そういった方針を検討することが重要です。
営業DX推進のポイント3点
最後に、弊社として今後営業DXを推進する際のポイントを3つお伝えします。
ポイント1.方針検討にあたって次の2点を明確にする
・売上拡大に向けてとるべき成長戦略は何か?
・対象となる顧客とどのような関係性を構築していきたいか?
2点目については、MAやインサイドセールスなどお客様との関係を構築する最適な手段を考えるうえで基礎の部分になります。
お客様との関係を築くためには欠かせない「カスタマージャーニー」解説記事はこちら
ポイント2.推進体制の検討にあたり、既存の組織の枠組みを超えたメンバー選定を行う
社内の役職や職務にこだわることなく、適切なスキルを持つ人材の登用が重要です。例えばデジタルに詳しい若手を積極的に採用することも有効と考えます。彼らデジタルネイティブはデジタルサービスの使い方に慣れているのを活かして、社内にどう活用できるかといった観点でのアドバイス・意見だしが期待できます。
ポイント3.迅速な意思決定に向け、推進体制はフラットな組織構造を意識する
営業DXの施策には正解があるというわけではありません。そのため、それぞれの取組みに対して自社への適合性やCXといった観点での評価を行い、継続・拡大するべきかやめるべきか、といった迅速な意思決定が必要になってきます。階層的な組織構造では1つ1つの意思決定に対し時間を要してしまい、結果としてDX全体の進捗の遅れや手戻りに繋がります。迅速な推進のためには、推進体制はフラットで、先ほどのような役割分担のもとで建設的なディスカッションを行いながら、迅速な意思決定をしていくのが望ましいと考えます。
これらのポイントが御社の営業DX推進において役に立つことを願っております。
おわりに
本コラムでは、営業DX実態調査の結果と、そこから得られたインサイトとして営業DXを推進する上での重要なポイントをご紹介しました。
これらのポイントが御社の営業DX推進において役立つことを願っております。
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