インサイドセールスという営業手法が広く知られるようになった昨今、その導入が進みつつあります。そんななか、次の課題となるのが、インサイドセールスとフィールドセールスの業務連携です。この記事では、インサイドセールスとフィールドセールス、それぞれの特徴を踏まえながら、両者がうまく連携するための方法やポイントを解説します。
目次
近年における営業モデルの変革
フィールドセールス(訪問型営業/アウトサイドセールス)の衰退
近年、特に海外においてフィールドセールスは衰退しつつあります。その主な理由として、
- 顧客が対面での商談を求めていない
- 営業効率が低い
- ITインフラの発達
などが挙げられます。
十数年前までは顔を合わせなければ困難だった営業活動も、メールやWeb会議システムなどを活用することで、対面のコミュニケーションでなくても顧客との関係を構築することができるようになりました。顧客と営業担当者の双方が、営業活動を最適化していると言えるでしょう。
インサイドセールス(内勤型営業)の発展
インサイドセールスは、もともと国土の広いアメリカで生まれ、少ない営業リソースでより多くの顧客に対応する営業手法として発展してきました。インサイドセールスを営業活動に取り入れることで、顧客を訪問するために使っていた移動時間や、確度の低い顧客に割いていた時間を大幅に削減でき、本来の営業活動に集中できるようになります。必然的に営業効率が上がり、売上の拡大も期待できるでしょう。
また「顧客の購買行動の変化」もインサイドセールスの発展を後押ししています。Webが情報源の中心となった今日では、欲しい製品やサービスの情報が、インターネット経由で容易に手に入るようになりました。何かわからないことがあれば問い合わせ専用窓口へ電話で確認したり、ホームページの問合せフォームやメールで解決できるようになり、顧客は必要な情報を必要なときに素早く収集できるようになりました。
これらの状況を踏まえても、インサイドセールスの役割は今後ますます高まっていくと言えます。
インサイドセールスとフィールドセールスが連携する新たな営業モデル
顧客の購買行動の変化に合わせて、企業も営業モデルを変革させる動きをみせています。インサイドセールスとフィールドセールスが互いに協調して営業活動を行う方法です。
企業はまず、顧客が情報収集に訪れるWebサイトを整備し、カスタマーセンターに集められた顧客のニーズや反応をマーケティング活動に反映させます。そして、見込み客に対して継続的なアプローチを行う専任部隊として、インサイドセールス部隊を設置するのです。インサイドセールスが見込み客のフォローや醸成(リードナーチャリング)を担当し、顧客の温度感が高まったところで、実際の提案や商談を行うフィールドセールスにバトンタッチするというのが、新たな営業モデルです。
インサイドセールスとフィールドセールスの連携の具体例
営業プロセスを分担する「プロセス分業」
営業活動の前半(リードの発掘や醸成)をインサイドセールスが担当し、フィールドセールスが提案・成約活動を担当する、といったように、営業プロセスをインサイドセールスとフィールドセールスとで分担する方法が「プロセス分業」です。
プロセス分業の効果
たとえば、10名のフィールドセールスが1人当たり1億円の売上、合計10億円を計上しているものとします。そこに、インサイドセールス担当者が3名加入するとしましょう。営業部門の人数は増加しますが、分業によってそれぞれの業務効率が上がり、1人当たり1.2億円に売上を向上できれば、計13人で15億円超の売上を計上できるようになるのです。
さらに、それぞれのスタッフが担うべき営業活動領域が明確になることで、目標達成に向けた進捗の可視化や、モチベーションアップにつながるといったメリットもあります。
より実践的なプロセス分業モデル例
一方で、インサイドセールスとフィールドセールスのプロセス分業の方法は、必ずしも1つのパターンに限りません。目的別・商材別・ターゲット属性別などの「顧客セグメント」によっても最適なプロセス分業モデルは異なります。
例えば、期待される売上規模が大きい「大規模セグメント」では、最初からフィールドセールスが全面的に顧客対応に当たる方が営業効率が良い場合があります。
反対に「小規模セグメント」では、数多くの企業にアプローチが必要となるため、インサイドセールスとフィールドセールスの役割を完全に分離する必要があります。前半から中盤までの営業プロセスでは、インサイドセールスが電話やメールを駆使して顧客とのコミュニケーションを図り、フィールドセールスは終盤のクロージングに特化します。
「中規模セグメント」では、顧客の状況に応じてインサイドセールスとフィールドセールスが二人三脚で協力しあう方法が、最も効果的となるケースが多くあります。
ここで重要なことは、顧客企業の規模や特性に応じて、インサイドセールスとフィールドセールスのプロセス分業モデルを臨機応変に変えていくことです。つまり、両者がどのような割合で分業するべきか、投入リソース(人員数)と売上・利益との費用対効果を考慮することがポイントなのです。
インサイドセールスとフィールドセールスの連携を強固にする3つのポイント
インサイドセールスとフィールドセールスの連携を強固にするために何よりも重要なのが「密にコミュニケーションを取る」ことです。特に以下のようなポイントで、インサイドセールス担当者がフィールドセールス担当者を手厚くフォローすることが求められます。
1.顧客情報の共有
インサイドセールスからフィールドセールスへ顧客を引き渡すとき、
- これまで顧客とどのようなやり取りをしてきたか
- どのような経緯で引き渡しに至ったのか
- 顧客はフィールドセールス担当者に何を期待しているのか
といった情報を、できるだけ詳細に共有することを心がけましょう。
2.最適なタイミングで顧客を引き渡す
フィールドセールスへ顧客を引き渡すタイミングにも気をつけましょう。電話を切った直後から、時間の経過とともに顧客の興味・関心はだんだんと薄れていきます。できるだけ時間を空けずにフィールドセールスへ引き渡し、確度の高い顧客の取りこぼしを防ぎましょう。
3.顧客の温度感を尺度化する
インサイドセールスがヒアリングした顧客の課題を、温度感が高いと捉えるか、まだ醸成の必要がある段階と判断するか、それらについて共通の尺度を持っておく必要があります。例えば「会社レベルで認識されている課題か」「具体的に予算の話まで進んでいるか」といった具合です。
インサイドセールスが顧客からヒアリングすべき情報については、「BANT(バント)情報(※)」などに基づいて温度感や引渡しの条件を決め、齟齬のないコミュニケーションを図りましょう。
※BANT(バント)情報:Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)の4つの頭文字を取ったキーワード。顧客の予算やニーズ、注文時期などの見極めに用いられる。BANT(バント)情報についての詳しい記事はこちらをお読みください。
インサイドセールス導入の4ステップ|②セールスモデルの策定
インサイドセールス普及の背景や、営業・マーケティングにおける役割、導入効果、導入フロー、成功事例についてはこちらの記事をお読みください。
インサイドセールスとは?その役割・特長と導入の効果を徹底解説
おわりに
インサイドセールスの発展とフィールドセールスの衰退、とご説明してきましたが、決してフィールドセールスが不要になるということではありません。今後はこの2つの営業手法を効果的に連携させていくことが重要なのです。どちらか一方にアロケーションするのではなく、両者の特徴を把握して適切に組み合わせれば、営業活動全体が効率化されるとともに、顧客訪問による成約率のアップも期待できます。
さらに、情報共有の仕組みを構築し、密なコミュニケーションを図ることが、目標に向かって組織全体で役割を明確に遂行することにつながるでしょう。
一覧へ戻る