マーケティング活動において、取引が発生する以前の見込み客の状態を「リード」と呼びますが、そのプロセスは「リードジェネレーション(集客)」「リードクオリフィケーション(選別)」「リードナーチャリング(育成)」の3つに分けられます。この記事では、それぞれのプロセスの特徴や方法について詳しく解説します。
目次
リード(見込み客)を顧客に育てる3つのプロセス
マーケティング活動においては、見込み客を顧客へと育てる段階的なプロセスを、以下の3つに分けて管理することが一般的です。
- リードジェネレーション(集客)
- リードクオリフィケーション(選別)
- リードナーチャリング(育成)
集客(生成)されたばかりのリードに対して、営業がすぐに直接アプローチすることはあまりありません。なぜなら、自社や、自社の商品・サービスにどれくらい関心があるのかわからないリードにいきなり具体的な提案をしても、商談が成功する確率は低く、効率的とは言えないからです。
そのため、まずは集客したリードに対して継続して有益な情報を発信します。徐々にリードの興味・関心を喚起し、購買意欲が高まったところでフィールドセールス(訪問営業)へ引き渡して実際の提案やクロージングを行う方が、商談の成功率が高まるのは言うまでもありません。
プロセス1:リードジェネレーションとは見込み客を「獲得」すること
リードジェネレーションとは、マーケティングにおけるリード(見込み客)の獲得を指します。自社や商品・サービスに関心を持ってはいるものの、まだ個人が特定されてない状態のユーザーから、その後のマーケティング活動に必要な個人情報(氏名や会社名、メールアドレスなど)を取得して、将来ビジネスに発展し得る“顧客”を獲得する最初の重要なプロセスです。
リードジェネレーションの重要性
どれほど魅力的な商品やサービスがあり、優秀な営業パーソンが所属する営業部隊があったとしても、販売対象となり得るリードの存在がなくてはビジネスとして成立しません。リードジェネレーションはマーケティングプロセスのスタートラインであると同時に、売り上げを作る基盤となる欠かせない要素です。
一度に多くの情報を入手すればよいというわけではなく、その後のマーケティングプロセスや最終的な成約を視野に入れて、質の高いリードを集めることが最も重要です。
リードジェネレーションの方法
シナリオ設計
リードジェネレーションの最初の一歩は「シナリオ設計」です。マーケティング施策発足の段階でしっかりと「シナリオ設計」をしておけば、自社のターゲットになり得るリードを効率的に獲得することができ、次のプロセスを実行する部門へリードを渡す基準もクリアになります。
以下のような点を考慮して、社内の当該部署や関係者と共通の認識を持ち、自社に合ったシナリオの構築を心がけましょう。
- 購買の動機となるマーケティング施策の検討
- マーケティング施策に最も相性の良いチャネルとの組み合せ
- ABテストを活用した効果検証
- より具体的なターゲットの選定(どのクラスターから、いつまでに、どの程度のリードを作るのかなど)
オフラインでのリードジェネレーション
オフラインによるリードジェネレーションの具体的な手法としては、以下のような例が挙げられます。
- 展示会出展やセミナー開催
- 商談や打ち合わせ、イベントなどでの名刺交換
- DM(ダイレクトメール)
- 新聞/雑誌/テレビ/ラジオなどのオフライン広告
- テレマーケティングによるアンケート調査、など
オフラインによる手法では、アナログで取得した情報をデジタル化して活用するケースがほとんどです。そのためのデータ変換ツールやデータベースなど、多種多様なデジタルツールが存在します。
また、オフラインによる手法は「マーケティング施策に活用可能なデータ」として、手元に揃うまでにタイムラグが発生することがあります。例えば大量の名刺情報をデータベースに登録したり、その作業を外部に委託することになれば、当然時間もコストもかかるでしょう。
そのためにも目標とするリードの数や期日、ターゲットをより具体的に設定し、広告宣伝費などの費用対効果とのバランスを考慮した上で、目的に合った手法を選択する必要があります。
オンラインでのリードジェネレーション
オンラインによるリードジェネレーションの具体的な手法としては、以下のような例が挙げられます。
- 自社サイト/オウンドメディア運用
- ホワイトペーパーダウンロード
- インターネット広告
- SNS運用
- 動画
- Webinar(オンラインセミナー)
オンラインによる手法はMAなどのデータベースと連携するケースが多く、例えば自社サイトやオウンドメディア、ホワイトペーパーなどであれば、サイトを訪れたユーザーに専用フォームへ個人情報(氏名/社名/メールアドレス/役職など)を入力させ、連携するデータベースに自動的に情報が登録される仕組みなどがあります。個人情報を取得するトリガーは他にも、セミナー申し込み/メルマガ購読/Web問い合わせ/資料請求、などが挙げられます。
データベースと連携させることでリアルタイムに顧客情報を取得することが可能ですが、一方で顧客が入力した情報がそのままシステムへ反映されるため、ターゲットとなり得ない無効なデータ(学生や競合他社など)を事前に排除することができません。
また、複数の経路からリード情報を取得して同じデータベースで管理する場合も注意が必要です。たとえば、あるリードがセミナーの申込みフォームには正しい部署名を入力し、資料ダウンロードフォームには適当な部署名を入力したケースがあったとします。この場合、どちらが正しいのか判別することは不可能です。データベースは最新のアクションに基づいて更新されることもあるため、誤った情報が蓄積される可能性があることも頭に入れておく必要があります。
プロセス2:リードクオリフィケーションとは見込み客を「選別」すること
リードクオリフィケーションとは、広い意味でリードを「選別」することです。マーケティング活動においては、マーケティング部門から営業部門、あるいはインサイドセールスからフィールドセールス(訪問営業)へとリードを渡すタイミングで、それぞれリードの選別を行います。
リードが購買行動を起こすきっかけを指標化することは難しく、どのようなリードを選定するかについては、結局のところ「リードを引き渡す先の部門や次のプロセスが受け取るかどうか」が各社の基準となるでしょう。
リードクオリフィケーションの重要性
1. マーケティング部門から営業部門の場合
せっかく獲得した顧客情報も、データベースに登録されなければ無いものと同じです。リードジェネレーションで獲得したリード情報は、リードナーチャリングを行う前にしっかりと整理する必要があります。まずリードナーチャリングを行う前段階として、ターゲットになり得ないリード(学生や競合他社など)を除外します。
- データの登録:マーケティング施策に必要な項目の検討
- データベースの統合:複数部署で保有するデータの一元化、重複の削除など
- データクレンジング(データマイニング):古い情報や誤った情報の精査・修正
データが整理されていないと、どの見込み客にどのような情報発信やマーケティング施策を打つのか方針が決まらず、誤ったデータを用いて不適切なマーケティング施策を打ってしまう可能性があります。リード数が多ければ多いほど、顧客データの整理は慎重かつ確実に行いましょう。
2. インサイドセールス→フィールドセールス(訪問営業)の場合
営業の本来の業務は、自社の売上を創出することです。フィールドセールスがすべてのリードをフォローし育てていくことは現実的でなく、提案や商談などの業務に注力できません。
リードクオリフィケーションによって、初めから確度の高いリードを選りすぐってインサイドセールスからフィールドセールスへパスができれば、商談の成功率も上がり、業務も効率化できます。
リードの「質」はなかなか可視化しにくいものですが、ひとつの基準としてMA(マーケティングオートメーション)と呼ばれるツールを活用するのが一般的です。
リードによる過去のアクションをもとに、興味・関心の度合いに一定の基準を設けて可視化を行えば、選別の自動化ができます。例えば「メルマガを開封したら10点」「セミナーに出席したら30点」といったようにリードの「質」を点数化して、ある程度の点数に達したら営業に通知を送る設定をする、という流れです。こうすることで、リードを次工程へ渡すプロセスがさらにスマートになります。
リードクオリフィケーションの方法
スコアリングとは
リードクオリフィケーションの方法として最も一般的な手法に「スコアリング」があります。スコアリングとは、先ほどの段落でもお伝えしたように、リードの行動や属性などに応じて点数をつけていく方法です。MA(マーケティングオートメーション)などの導入でその作業はほとんど自動化されています。
行動要因による配点
- Webサイト訪問
- メルマガ開封
- 資料ダウンロード
- セミナー参加
- 具体的な問合せ など
属性要因による配点
- 企業規模
- 売上規模
- 役職
- 業種
- 職種 など
※スコアリングの例
- メルマガ開封 10点
- セミナー出席 30点
- 中小企業 5点
- 部長以上の役職 10点 など
配点は主にマーケティング部門が行いますが、まずはスコアリングの対象となる項目を絞り込み、適切な加算基準を設計することが重要です。基本的にはリードのアクションや属性の重要度が高いほど点数も高くなり、合計点の高いリードほど成約の可能性が高いと判断されます。例えば合計点が○点以上を超えたら営業部門へ引き継ぐなどのルールを決めておけば、タイミングを逃さずに営業部門と連携することができるようになるでしょう。
このように、リードの興味・関心度がある程度可視化できるスコアリングは利便性が高いといえます。しかし、日本ではなかなか“絶対的な基準”とまではなり得ず、特にリードの保有件数の多い大企業では“参考程度の情報”としている企業が多いのも事実です。リードの行動を機械的に点数によって重み付けすることは難しく、「正解」を作りづらいのが現実と言えます。
インサイドセールス部門による温度感の見極めも重要
スコアリング基準によって選別され、インサイドセールスからフィールドセールスに引き渡されたリードの中には、実際にフィールドセールスがアプローチしてみると反応が悪く、ホットリードとは程遠い状態であることがしばしばあります。
その要因の一つに、リードは顔の見えないインサイドセールスには「予算」のような具体的な情報も躊躇なく話すことができても、いざフィールドセールスを目の前にすると「売り込まれるのでは」と考えて身構え、急にガードが硬くなってしまうという現象が起こり得るのです。
また、フィールドセールスが実際に訪問した際に、リードの温度感があまりにも低かったり、引き継がれた内容と実際の情報に乖離があったりすることも多々あります。そうしたトラブルの発生頻度や総合的なバランスをみて、インサイドセールスからフィールドセールスへ引き渡す条件の見直しを検討することも重要です。
プロセス3:リードナーチャリングとは見込み客を「育成」すること
リードナーチャリングとは、リードの「育成」です。メールや電話、デジタルツールを用いてリードにとって有益な情報を発信し続け、自社や商品・サービスに対する関心を引き出すなど、購買意欲を高めるための手法やプロセスを指します。
リードナーチャリングの重要性
顧客の購買行動の変化
近年では、すべての業界・業種で製品・サービスのコモディティ化が進み、良い商品やサービスを生み出すだけで顧客に支持され続けることは難しくなってきました。顧客の情報収集源は時代とともにWeb中心へと変化し、営業担当者が接触する前に、すでに他社の製品情報まで持ち合わせているということも珍しくありません。
こうした情報収集環境の変化を逆手に取り、リードの状況に応じた情報やコンテンツを、適切なタイミングで積極的に提供して自社や商品・サービスへの興味を喚起することがリードナーチャリングの使命です。
既存顧客のフォロー
リードナーチャリングによって、新規の見込み客だけでなく、既存顧客のフォローを行うことも可能です。たとえすぐには案件化できなかったとしても、継続的な情報発信によって中長期的な視点で顧客との関係性を保ち、自然なきっかけで休眠顧客との接点を持てるのもリードナーチャリングの重要な役割のひとつです。
見込み客の「質」の向上
集客したリードすべてが、自社や商品・サービスに対して強い関心や豊富な知識を持っているわけではありません。リードの属性や関心の度合い、知識量などの状態に応じて的確な情報発信を続け、時間をかけて関係性を構築すれば、リードが抱える課題やニーズ、熱量をある程度把握することができます。
また、既に個人の属性情報が明らかになっているので、例えば決裁者と推測できる「役職」等の特定のセグメント情報を軸にターゲティングするなど、仮説や戦略も立てやすくなります。
リードナーチャリングの方法
リードナーチャリングの方法は、先に述べたリードジェネレーションの方法と大きな違いはありません。しかし、リードナーチャリングの役割はリードの「育成」ですので、リードに発信する情報やそのタイミングは、それぞれの興味・関心の度合いに寄り添ったものへと変化します。
例えば、メルマガの配信ひとつにしてもすべてのリードへ毎回おなじ内容を配信するのではなく、リードのWeb上の動きを記録・分析し、データに基づいて配信する内容の選択を行います。Aというコンテンツへの反応が良かったリードへは、分野が類似したA’のコンテンツを、セミナーBへ申込履歴のあるリードへは、近々開催予定のある類似セミナーB’の招待メールを自動的に配信する、といった具合です。
ナーチャリング施策影の立役者「MA(マーケティングオートメーション)」とは
インサイドセールスによるリードナーチャリング
また、リードナーチャリングと非常に親和性の高い手法として、インサイドセールスがあります。
インサイドセールスによる電話でのアプローチにおいては、例えば、リードが自社サイトから資料をダウンロードしたというWeb上のアクションを参考に、興味・関心のありそうな話題や他の資料を提供したり、前回の会話の内容を踏まえてニーズに合致しそうな商品情報を次回のコールで案内したりと、より深い情報提供によってリードを育成することが可能です。
インサイドセールスについての詳しい記事はこちらをお読みください。
インサイドセールスとは?その役割・特長と導入の効果を徹底解説
おわりに
リード(見込み客)に向けた3つのマーケティングプロセス「リードジェネレーション(集客)」「リードクオリフィケーション(選別)」「リードナーチャリング(育成)」は大変重要です。どれかひとつでも抜けてしまえば、マーケティング施策の成功からは遠のいてしまいます。
MA(マーケティングオートメーション)やCRM、SFAといったデジタルツールを上手く利用して、できる限り管理業務を自動化し、その分マーケティング部門や営業部門は施策の改善や戦略の立案に注力できる環境作りを行うことも、成功の秘訣と言えるでしょう。